【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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初夜 ①

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「ユベール様、アレク様は業務でお忙しく、残念ながら今夜はこちらに来られなくなってしまいました……。ご支度までしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません」
 ソファーにすわる僕の隣に座るヒューゴ様が座り、眉尻を下げ申し訳なさそうに言った。
「いえ、殿下がお忙しいのは当然で、僕が殿下の手を煩わせてしまうことは、あってはならないことです。だからどうか僕に申し訳ないと思わないでください」
 そういいながら、僕は真底ほっとする。
「殿下に『あまりご無理をされないでください』とお伝えください」
「必ずお伝えいたします。それでは私はこれで……」
 ヒューゴ様が頭を下げ部屋の外に出られるまで、
僕は見送った。
 部屋に一人になり緊張の糸が切れ、ベッドのヘリに座り込む。

 よかった……。

 胸を撫で下ろしていると、クロエが部屋に入ってきた。
「きっと殿下は本当は今夜、ユベール様との初夜を迎えたかったと思います。でも殿下は本当にお忙しい方なので、今夜のことは、どうかお気になさらないでくださいね」
 ガウンとガウンの下に着ていた肌触りがよく、体のラインが透けて見えるネグリジェを脱がせ、綿のパジャマに着替えさせてくれる。
「うん。殿下がお忙しい方だとわかっているよ。だから僕は、今夜のことで殿下の手を煩わせてしまわなかったことが、本当によかったと思うんだ」
「それでも……」
 クロエは何か言いたそうだったが、途中で口ごもった。
「何がお飲み物をお入れしましょうか?」
「うん。昼間淹れてくれたハーブティーが飲みたい」
「かしこまりました。ご用意いたしますので、少々お待ちください」
 そう言ってクロエは部屋をあとにした。
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