【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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運命 ③

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 伯爵の養子になったからといって、少しの間でも煌びやかな生活ができるわけではなかった。
 日の当たらない物置に硬いベッドだけ置かれ、衣服は連れてこられた時のまま。
 食事はカビの生えかけたパンに、野菜の皮やくずが入っただけのなんの味もしない冷たいスープが一日一回。
 風呂も入れず、使用人達もが寝静まった夜中、水を汲み体を拭いた。
 誰の目にも止まることのない、監獄に入れられた囚人のような日々だった。
 でもその方が良かった。生きながら死んでいるような生活の方が。


 とうとう、その日がやってきた。
「いいかユベール。何を聞かれても『ローズ様がアレキサンドロス様のご側室に迎えられると聞き羨ましく思い、私の一存で・・・・・でローズ様の代わりに殿下の元に謁見させていただきました。ダインズ家とは全く関係ないことでございます』と言うんだぞ。決して本当のことを言ってはいけない!わかったか!?」
 伯爵家に着いてから、宮廷に行く日までずっと言われ続けたセリフ。
「わかっています。決してその他のことは言いません。だから孤児院のこと、よろしくお願いします」
 高級な花嫁衣装を身に纏い、僕は孤児院の未来を託したダインズ伯爵に深々と頭を下げる。
「お前がヘマをしない限り、援助し続ける。だが我が家に何か不都合があれば…わかっているだろうな…」
 伯爵の最後に念押しに、大きく頷いた。
「はい、絶対に失敗はしません!」
 僕は絶対にみんなを守る。
 固い決意と共に、誰の見送りもないまま馬車に乗り込んだ。
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