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愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜

気持ち ③

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「一度、俺がヒートになった時のことを覚えてますか?」
「あ、ああ。ヒートになってしまった鈴木にあんなことをしてしまって……。人としてどうかしている。本当にすまない」
 冷静になればわかることなのに、あんな状態の鈴木を抱こうとしたなんて、最低だ。

「あの時、ヒート促進剤を使って、わざとヒートになって内藤さんにわざとフェロモンをあてたんです」
「え?わざと?」
「もしあの時抱いてもらえていたら、俺は昔のことは何もなかったことにして何も告げず、ずっとそばにいたいと思っていました。でも、内藤さんはヒートにあてられようと、俺を気遣い紳士的に接してくださいました。俺のことを心配したり大切にしてくださった内藤さんに本当のことを話て、俺みたいに卑怯な奴は内藤さんの前からいなくなろうと思ったんです。俺は、俺は……」

 涙を我慢しているにもかかわらず、涙が瞳から溢れ出している鈴木の腕を掴み、俺は鈴木を引き寄せ抱きしめる。

「どうして!?どうしてそうなるんだ?」

 どうして?
 どうしてそんなことをした?
 どうしてそんな自分を傷つけるだけの賭けをした?

 もし、俺が鈴木を抱いていたら過去をなかったことにはできなにのに、鈴木は自分におこったこと全て何もなかったことにしようとした。

 俺が抱かなかったから、自分は卑怯者だと決めつけて自分を責める。
 どちらになったとしても、傷つくのは鈴木だ。

「どうしてお前は自分ばかり悪者にして、自分ばかり傷つける。悪いのはお前じゃない。内藤財閥俺たちなんだ。わかるか? お前じゃない」
「違う。違います! 悪いのは全部、俺なんです」
 胸の中で、鈴木は止まらなくなった涙を流しながら首を振った。

「俺が、俺が悪いんです……」
 鳴き声が嗚咽混じりになってくる。
 体も震えている。
 胸の中で怯えている鈴木は、今にも消えてしまいそうで、恐ろしくなる。
 俺は鈴木のことが、誰よりも……

「好きだ」

 鈴木に対して抱いてしまった気持ちは伝えず、自分の中にしまっておこうと思っていた。

 でもできなかった。
 言わずにはいられなかった。
 少しでも震えが治るように、鈴木をより包みこむよう強く抱きしめる。

「俺は鈴木のことが好きだ。誰よりも愛おしい」
 はじめは復讐相手として俺に近づいてきて、ずっと嘘をつかれていたとしても、鈴木と過ごした幸せだった時間は本当で、鈴木に対して抱く気持ちも本物だ。
「好きだ。ずっとそばにいさせてほしい」
「……」
「鈴木と……、圭太と同じ景色を見ていたい。愛してるんだ」
「!」
 圭太の目が驚きで見開かれる。
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