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愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜

気持ち ②

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「工場が倒産し親父さんは過労で亡くなったこと、本当に申し訳なく思っている。許して欲しいと言って許せる話ではないのはわかってる。だけどどうしても謝罪がしたくて。本当にすまなかった」
 鈴木の方に体ごと向けて頭を下げる。
 まずは第一番に謝罪しないといけないことだ。

 俺の手を握っている鈴木の手に力がこもる。
 俺に体をもたれかからせていた鈴木は俺から体を離し、頭を下げ続けている俺の方に体ごと向けた。

「もういいんです。それは昔のことだし、工場が潰れてしまったことは内藤さんのせいじゃない。俺の勝手な逆恨みです」
「……」
「だからどうか頭を上げてください」
 頭上から声がして、俺は頭を上げた。

「さっきの僕の質問の答えは、これだったんですか?」
「違う」
「じゃあ、俺ができの悪い部下だからですか?」
「違う」
「じゃあどうして!?」
「それは……」 

ーそれは鈴木が特別だからー

 一瞬そう言いそうになった。

 でも鈴木ニとって俺は親の仇。
 幼かった鈴木を1人にしてしまったのは、間接的にでも俺達だ。

 ずっと一緒にいたかった。
 一緒にいたかったけど、一緒にはいられない。
 鈴木の未来には負の記憶が残る俺は、必要ない。
 なんと言えばいいかわからず黙っていると、鈴木の顔が泣くのを我慢するようにくしゃりと歪む。

「出会わなけば、よかった」
「……」
「副社長に、内藤さんに出会わなければよかった。知り合わなければよかった。だったら、こんなに辛くなることなんてなかったのに。ずっと嫌いでいられたのに。許さずにいられたのに……」
「……」
「なのに、もう出会ってしまって知ってしまった。もう嫌いになんてなれない」
 はらはらと鈴木の瞳から涙が溢れる。

「内藤さんと一緒に暮らして人柄に触れて、本当に毎日楽しかった。父さんを殺した会社の副社長なのにって思っていても、心のどこかで内藤さんとの生活がずっと続けばいいのにって思ってて」
「え?俺との生活がずっと続けばいいって、どういうこと?」
 鈴木の話を途切れさせることなく聞こうと黙って聞いていたが、鈴木の思いもよらない言葉につい聞き返してしまった。

「ストーカーのことで悩んでいた時、助けてくれて、N社の長野さんの時も助けにきてくださいました。俺が仕事や家事で失敗しても、優しく教えてくれたり、一緒にテレビを観たり買い物したり、とても楽しかったです」
「俺も、鈴木との生活が……」
 楽しかったと言おうとした時、
「でも苦しかった。楽しかった分、とても苦しくて辛かった」
 遮られた。

「もう憎めなくなっていた。ずっと騙してやろうと思っていたのに、どんどん内藤さんを騙していることが辛かった。内藤さんにどんどん惹かれていくことが苦しかった。もう出逢う前には戻れない。だからもう、俺は内藤さんと一緒にはいられないんです」
 え?鈴木が俺に惹かれている?
 まさか、俺に復讐するんじゃなかったのか?
 憎い相手じゃなかったのか?
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