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愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜

気持ち ①

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 部屋に着くまでの間、鈴木は何かを考えるように黙ったまま車窓をぼーっと眺めていた。

 まさか谷川がストーカーだったなんて。
 俺ですら驚いているのに、谷川に好意を持っていただろう鈴木からしたら、ショックは相当なものだろう。
 なんて言ってやればいいかわからず、鈴木にかける言葉が見つからない。


 部屋につき、呆然としている鈴木をソファーに座らせる。

 とにかく安心させてあげないと。
「コーヒーでも淹れてくるから、そこで待ってて」
 キッチンに向かおうとした時、上着の裾を引っ張ら振り返る。

「ここに……いてください」
 下を向いたまま、震えた声の鈴木が言った。
 心細いんだろう。鈴木の隣にそっと座る。
「手、握ってくださいますか?」
 返事をするかわりに、鈴木の手を取り握る。

 今まで気づかなかったが鈴木の手は小刻みに震え、氷を触っていたかのように冷たい。
 両手で鈴木の手を包み込むと、俺の肩に鈴木はゆっくり頭を乗せてくる。

「しばらくこのままでも、いいですか?」
「ああ」
「ありがとうございます」
 そう言うと鈴木が目を閉じた気配がし、俺に寄りかかる重さが増した。
  

 本当は2、3分だけだろうが、体感的には長いような、短いような沈黙が流れ、
「何となく、気づいてたんです」
 俺の肩に頭をのせ、寄りかかっている鈴木が言う。
「え?」
「以前、瑞稀さんと谷川さんのこと話した時から、確かに俺への態度がおかしいなって思って。それかからどんどん不信感が募ってきて、俺への執着がどんどん大きくなっていっているのも気づいてたんです」

 気づいていたのにどうして?
 どうして一緒にいたんだ?
 どうして俺に言ってくれなかった?
 相談してくれなかった?
 そう思ったが、それを言ってしまえば、鈴木を攻めてしまいそうでやめた。

「もしかして……って思ってたけど、いざ谷川さんが本当のストーカーで色々なことをしていたって知ると、本当に怖くて……。もし内藤さんが助けにきてくれなかったら、俺は監禁されていたかもしれない」
 晴人から犯人は谷川だと告げられた時、それが一番最初にそれが頭に浮かんだ。
 さっき見た谷川なら、もっと酷いこともしたかもしれない。

「内藤さんはどうしていつも俺を助けてくれるんですか?俺は内藤さんを騙して復讐しようとしていた人間ですよ。なのにどうして……そんなにやさしくしてくださるんですか?」
 そう聞かれて、俺の気持ちをすぐに伝えようかと思ったが、それより先にすることがある。
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