【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

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愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜

N社との話し合い ④

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「お待ちください」
「困ります」
 料亭に乗り込んできた俺を女中が止める声がする。

「女将を出してくれ」
「これはまぁ昴様。今日はお早いおこしですね」
 やけにゆっくりとした口調で女将が話す。

「長野さんと鈴木がいる部屋を教えて欲しい」
 できるだけ冷静に聞く。
「長野さんですか?今日は来られてませんよ」
 顔色ひとつかえず、にこやかに答える。
 さすが老舗料亭の女将だ。
 些細なことでは動揺しない。
 ではこちらも……。
「そうですか」
 踵を返して帰るそぶりを見せ女将が「またのお待ちしています」と頭を下げた時。
 俺はくるりとまた踵を返し靴を脱ぐと、女将や女中の静止も振り切り廊下を進み、一番最初にあった部屋のふすまを開ける。

 そこには食事を楽しむ老夫婦が。
「申し訳ありません」
 形ばかり謝罪しふすまを閉めると、次の部屋のふすまを開ける。
 そこにも長野さんと鈴木はいない。

「おやめください、おやめください」
 女中の声が廊下に響く。
「2人の居場所がわかるまでやめないよ」
 足を止めず前に進む。
「昴様、自分が何をされているのかお分かりですか?」
 後から女将の声がし、俺は足を止めた。
「わかっている」
「今の昴様はどうかされています。今日のところはおかえりください」
 女将がギリリと睨むが、そんなことどうでもいい。
「わかった」
 俺はまた次の部屋のふすまを開ける。

 ここにもいない。
 鈴木、いったいどこにいる。
「女将、いったいいくら積まれたのか知らないが、この料亭も女将も随分落ちぶれたモンだな」
 ふっと鼻で笑うと、能面のような笑顔を貼り付けていた女将の顔がピクリとした。

「女将だったら長野さんの噂ぐらい聞いているだろう。部屋の用意をするなんて、この料亭もその辺のいかがわしい店と変わりないな」
 女将の顔が怒りで赤く染まり、右手が挙げられた時、

「やめてください!」
 奥の部屋から鈴木の声がした。
「鈴木!」
 声のした方に走る。
「離してください!」
 また鈴木の声がする。

「鈴木!」
 鈴木の声が確かに聞こえた部屋のふすまを勢いよく開けると、上向けに倒れる鈴木の上に馬の乗りになっていて、鈴木は両手懸命に長野の体を押し返していた。
 鈴木のスーツのジャケットは途中まで剥がされ、ネクタイは解かれワイシャツのボタンが引きちられている。
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