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桜の木の下で ①
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千景に父親のことを話した晩。
千景寝静まった後、瑞稀と晴人は今後のことを話し合いをした。
千景の言う通り、親子三人で一緒に住むことが一番いいと、できるだけ早く晴人が住むマンションで一緒に住もうということになり、引越しするまでの間、仕事帰り晴人がアパートに立ち寄り夕飯を食べて帰る日々が続いた。
瑞稀の新しい仕事場は決まっていたが、千景の怪我と入院で一度も出勤できていなかったことと、今後千景に何かあった時、晴人と瑞稀の職場が同じだと都合がつきやすいということから、派遣会社に職場移動の取り消しを相談したところ、今まで通り、内藤グループで幸恵と和子と共に正規の清掃員として働けることとなった。
仕事復帰した時、幸恵と和子に仕事のこと、晴人とのこと、晴人と両親とのこと、千景とのことを話すと、二人は涙を浮かべながら喜んだ。
社内で広がっていた噂は、瑞稀が千景に付き添っている間に昴が誤報だと周知させ、今後このような噂が出た時には、必ず上に報告して真実を調査させることとなった。
すれ違って噛み合っていなかった歯車が、一気に噛み合うように、解決できないと思っていた問題が、みるみるうちに解決されていく。
暗がりの中、手探りで毎日を送っていたことが嘘のように視界がハッキリし、誰に隠し事をすることも無く、晴れ晴れとした気持ちで過ごせる幸せを瑞稀は感じていた。
そして千景の退院から一週間後。
瑞稀と千景が晴人の家に引っ越す日が訪れた。
晴人が住む高層マンションの下に、引越しセンターのトラックが停まり、瑞稀と千景の荷物が晴人が一人で住んでいた部屋に次々と運び込まれる。
晴人一人の服だけしかかかっていなかったクローゼットに瑞稀の服がかけられ、以前は書斎だった部屋は千景の荷物や新しいベッドが運び込まれ、千景のための子供部屋になった。
食器棚にも三人分の食器が片付けられ、洗面所には歯ブラシが三本。
殺風景だった部屋の中に、人の温もりが加わったようだ。
「お昼は外に食べに行こおう」
朝からずっと片付けをしていた瑞稀と千景に晴人が提案し、三人仲良く家の近くのファミレスに行った。
千景はお子様プレート、瑞稀と晴人はパスタとピザを食べ、帰りにスーパーに寄り夕飯の材料を買う。
ありきたりな昼下がり。
そのありきたりな昼下がりが瑞稀にとって、とても新鮮で幸せだった。
千景寝静まった後、瑞稀と晴人は今後のことを話し合いをした。
千景の言う通り、親子三人で一緒に住むことが一番いいと、できるだけ早く晴人が住むマンションで一緒に住もうということになり、引越しするまでの間、仕事帰り晴人がアパートに立ち寄り夕飯を食べて帰る日々が続いた。
瑞稀の新しい仕事場は決まっていたが、千景の怪我と入院で一度も出勤できていなかったことと、今後千景に何かあった時、晴人と瑞稀の職場が同じだと都合がつきやすいということから、派遣会社に職場移動の取り消しを相談したところ、今まで通り、内藤グループで幸恵と和子と共に正規の清掃員として働けることとなった。
仕事復帰した時、幸恵と和子に仕事のこと、晴人とのこと、晴人と両親とのこと、千景とのことを話すと、二人は涙を浮かべながら喜んだ。
社内で広がっていた噂は、瑞稀が千景に付き添っている間に昴が誤報だと周知させ、今後このような噂が出た時には、必ず上に報告して真実を調査させることとなった。
すれ違って噛み合っていなかった歯車が、一気に噛み合うように、解決できないと思っていた問題が、みるみるうちに解決されていく。
暗がりの中、手探りで毎日を送っていたことが嘘のように視界がハッキリし、誰に隠し事をすることも無く、晴れ晴れとした気持ちで過ごせる幸せを瑞稀は感じていた。
そして千景の退院から一週間後。
瑞稀と千景が晴人の家に引っ越す日が訪れた。
晴人が住む高層マンションの下に、引越しセンターのトラックが停まり、瑞稀と千景の荷物が晴人が一人で住んでいた部屋に次々と運び込まれる。
晴人一人の服だけしかかかっていなかったクローゼットに瑞稀の服がかけられ、以前は書斎だった部屋は千景の荷物や新しいベッドが運び込まれ、千景のための子供部屋になった。
食器棚にも三人分の食器が片付けられ、洗面所には歯ブラシが三本。
殺風景だった部屋の中に、人の温もりが加わったようだ。
「お昼は外に食べに行こおう」
朝からずっと片付けをしていた瑞稀と千景に晴人が提案し、三人仲良く家の近くのファミレスに行った。
千景はお子様プレート、瑞稀と晴人はパスタとピザを食べ、帰りにスーパーに寄り夕飯の材料を買う。
ありきたりな昼下がり。
そのありきたりな昼下がりが瑞稀にとって、とても新鮮で幸せだった。
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