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話し合い ④
しおりを挟む「晴人さん。僕は今日こうして旦那様や奥様とお話しができただけで満足です。ありがとうございました」
瑞稀は晴人の手を握り、微笑んだ。
「あんなことをされたのに、本当にいいのか? もっと怒って怒鳴って罵っていいんだよ。俺の親だからって遠慮することなんてない」
晴人にそう言われたが瑞稀は頭を横に振る。
「晴人さんが僕の分まで怒ってくださいました。それだけで十分です。それにあの時、奥様にわかってもらえるまで話をしなかったことも、晴人さんに何も相談しなかったことも僕が悪かったんです」
瑞稀の代わりに晴人が怒ってくれたのが嬉しかった。
こんなことになる前に、自分の気持ちをもっと伝えようとしてこなかった自分も悪い。
晴人の両親だけが悪いわけじゃない。
それが瑞稀の本当の気持ち。
「晴人さんにとって旦那様や奥様は大切な家族ですし、旦那様や奥様にとっては、何歳になっても晴人さんは大切な息子なんです」
今の瑞稀には晴人の両親がなりふり構わず、我が子の幸せを願う気持ちも少なからずわかるような気がする。
「私達は、本当に大切にしないといけないことを、見間違えていたみたいだ」
黙っていた父親がぽつりと呟いた。
「……」
「本当に大切にしないといけないことは、当人たちの選んだ道を尊重することだったんだ」
「……」
「世間体や親の願いや私達が思う『幸せ』を押し付けることではなかった。間違いを犯し、君を深く傷つけた私たちのことを許してほしい」
「……」
「瑞稀さん。本当に申し訳なかった。そしてありがとう」
父親が瑞稀に頭を下げると、隣りに座っていた母親も
「あなたを傷つけてしまって、本当にごめんなさい」
瑞稀に頭を下げた。
「旦那様、奥様……」
2人と気持ちが通じ合ったようで、瑞稀は今までの出来事は無駄ではなかったのではないかと感じた。
「晴人、本当に申し訳なかった。どうかこんな私達を許してほしい」
父親は晴人を今日はじめて、きちんと真正面から見る。
「……。許すも許さないも、俺は瑞稀の気持ちが一番です」
僕の気持ち。
それは……、
「僕は、お二人と仲良くしたいです」
関係をやり直せるなら、やり直せるうちに。
修復できるなら、できるうちに。
僕と晴人さんみたいに。
心からそう思った。
「瑞稀がそういうなら……」
晴人が2人の目の前に右手を差し出すと、父親は晴人と握手をし、その上に母親が手を重ねた時目には涙が浮かんでいた。
よかった。本当によかった。
ずっとずっとあった親子の溝が埋まり、瑞稀がほっと胸をなでおろしした。
瑞希が幼い頃いつか見た、あの仲の良い家族に戻ることを祈って。
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