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話し合い ①

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「それでは先輩。よろしくお願いします」
「ああ。しっかり話し合ってこい」
 晴人は昴に肩をポンポンと二回叩かれ、気合いを入れられると、瑞稀と晴人は千景の病室を出る。

 今から晴人の両親と会う。
 瑞稀の鞄の中には5年前、手切金として渡され、一度も使われることがなかった小切手が入っている。
 また別れるように言われないかと、晴人の両親と会うのは怖い。
 以前は瑞稀1人だったが、今日は晴人がそばにいてくれる。
 だから頑張ろうと、決着をつけようと決めた。


 晴人が指定したのは、千景に何かあってもすぐに駆けつけられるようにと、病院のすぐそばにあるファミレス。
 ランチの混雑時を避けた14時。
 店内の客はまばら。
 晴人はできるだけ店の真ん中にあるボックス席を選び、そこに座った。

 晴人の両親は、約束の時間に10分遅れでやって来た。
「10分遅れですよ」
 両親が席につくなり、晴人は2人を睨む。
「何年も音沙汰がないと思ったら、話がしたいって待ち合わせの場所も時間も、晴人が決めてしまうんですもの。私たちにも予定ってものがあります」
 晴人の母親は息子の方だけを見て、瑞稀はいない人のような態度をとる。
「旦那様、奥様、ご無沙汰しています」
 喉の奥で止まってしまいそうになる言葉を、瑞稀はどうにか声にした。
「……。それで、晴人は家に戻ってくる気になったの?」
 晴人の母親は瑞稀のことを、完全に無視して話を進める。
「今、瑞稀が挨拶したの、聞こえてますよね」
 怒りで眉間に深い縦皺を作りながらも、晴人は冷静でいようと気持ちをこらえていた。
「そうだったわね。ごめんなさい。お久しぶりね、瑞稀くん」
 母親は顔に張り付いたような笑顔を瑞稀に向ける。
 すぐにでも小切手を返そうと思っていたのに、母親の無言の圧力で緊張してしまい、体が動かず膝のにおいている手が小刻みに震える。
「大丈夫。俺が全部決着をつけるから」
 晴人は瑞稀にだけ聞こえるように囁き、机のしたで瑞稀の手を握ると、両親の方をしっかりと見た。

「父さん、母さん。僕たちに謝らないといけないこと、ありますよね」
「なんのことかしら?」
 母親がとぼけながら父親の方を見ると、
「さあ、なんのことだか」
 父親もしらを切るつもりだ。
 
 先ほどまでは冷静に話をしようとしていた晴人だったが、父親と母親の態度で完全に怒りが頂点に達した。
「俺に内緒で勝手に瑞稀にあって、俺と別れるように仕向けたんですよね。手切れ金として小切手を渡してまで!」
 わざと店内に話の内容が聞こえるように、晴人は大きな声で話す。
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