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気づき ②

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僕はなんて浅はかで、自分勝手だったんだろう。
晴人さんかずっとずっと、こんなにもまっすぐに僕を見てくれていたのに……。

「晴人さん、ごめんなさい……」
 瑞稀の口から、その言葉がついて出て、晴人の顔がこわばる。
「どうして謝る?」
「僕、ずっと晴人さんのことを疑っていました。晴人さんが僕にむけてくれている気持ちは一時的で、すぐになくなってしまうって……」
「どうしてそんなこと……」
「僕、何も持ってないから……」
 瑞稀がそういうと、晴人の表情は穏やかになり、あははと笑みが溢れた。

「それ、前にも聞いたよ。『自分には何もない』って」
「……」
「だったら瑞稀は俺と一緒にいたのは、俺がなんでも持ってたからか? 実家が病院で時期院長。お金も持って贅沢な暮らしができたから?」
「ち、違います!」
「じゃあ何?」
 晴人は優しく微笑む。
「晴人さんが、晴人さんだったから……」
 答えになっていないことだったが、晴人が晴人だったから瑞稀は晴人のことが好きになった。
 いつもブレずに、自分の信じたことを、信じることを突き進んでいく晴人が、ずっと好きだ。
 そんな晴人のそばで、晴人と同じ方向を見て、晴人と同じ歩幅で歩いていきたいと思った。
 晴人が晴人だから、好きだったし、今でも好きだ。
 一緒に同じ未来や夢を見てみたいと思った。
「俺が俺だったから……か。瑞稀らしい答えだな」
 またあははと笑った。
 その笑顔は昔、初めて晴人と出会った時の笑顔のままだった。

「晴人さん。これから僕も晴人さんの隣りで、同じ景色を見てもいいですか?」
 瑞稀はやっと自分の言葉で、晴人に気持ちを伝えることができた。
 自分の気持ちは、自分が一番知っているようで、本当のところは自分が一番わかっていないのかもしれない。
 瑞稀は思った。

ー何をどうしたいー

 自分の意識で決めたらいいんだ。
 誰から言われるでもなく、決められるでもなく、自分で決めればいいんだ。
 決めて、自分で選んだ道をあるいていくんだ。
 そして思ったこと、感じたことをきちんと言葉にして伝えていこう。
 相手の気持ちを勝手に解釈して、すれ違わないように、どんなことでも話し合おう。
 そう思った。

「僕、晴人さんのそばにいたいです」
 瑞稀は晴人の胸に飛び込み、目を閉じ、
「ありがとう瑞稀」
 涙声の晴人は、もう離さないというように、瑞稀をきつく抱きしめた。
 瑞稀と晴人の中で止まっていた時間が、また動き始めた。
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