130 / 202
告白 ①
しおりを挟む
瑞稀の気持ちも落ち着き二人は黙ったまま、また廊下に静けさが戻ってくる。
「瑞稀、聞いてもいい?」
口を開いたのは晴人の方だった。
「はい」
「俺は千景君と同じように、先天的に出血したら止まりにくい体質だし、血液も特殊だ。この病気は子供の父方からしか遺伝しない。なぁ瑞稀、千景君は、いったい誰の子なんだ?」
今度こそ返事を聞かせてくれというように、晴人は瑞稀の目を真正面から、瞬きせず聞いた。
瑞稀はゴクリと唾を飲み込み、
「晴人さんの子どもです」
瞬きをせず、晴人の目を見て言った。
「そうか……」
晴人は特に驚きもせず、瑞稀の告白を受け入れる。
「どうして今まで言ってくれなかったんだ?」
「それは……晴人さんに迷惑をかけたくなかったんです」
「迷惑?」
晴人は眉を顰める。
「それどういう意味?」
「……」
「話してくれないとわからない」
声のトーンに苛立ちが感じられる。
「妊娠がわかった時、話そうと思ったんです。でも偶然奥様と会って、晴人さん、旦那様と奥様と連絡を取られてないって……」
「それと瑞稀の妊娠とどう関係があるんだ?」
先ほどまで隠そうとしていた苛立ちを、もう隠そうとはしない。
「晴人さんには許嫁の方がいらっしゃって、その方との話が進んでいると」
「じゃあ瑞稀は、俺に確認することなくそれを信じたの?」
「……はい……」
「どうして!?」
晴人は声を荒げその声が廊下に響き、晴人はハッと我に帰った。
「母さんのことだ。それだけ言いにきたんじゃないんだろ?」
いつものように、晴人は落ち着いて話す。
「実は……」
瑞稀は晴人の母親から手切れ金を突きつけられたこと。
晴人を不幸にしないでほしいと言われたこと。
話した。
「どうしてその話をしてくれなかったんだ? 俺が瑞稀といることで、どうして俺が不幸になるって思ったんだ? 一生一緒にいようと言ったのは、なんだったんだ?」
晴人が言いたいこと、聞きたいことは確かだ。
だがその時の瑞稀には、その選択肢を選ぶことはできなかった。
なぜなら……、
「晴人さんは、俺との子供、いらないのかと思って……」
まともに晴人の目が見れず、瑞稀は目を伏せて言った。
「はぁ?」
明らかに晴人の怒りの声が聞こえる。
「いつ、いつそんなこと言った?」
「晴人さんとお鍋を食べに行った時に……」
「そんな話、聞いてない」
「……」
晴人自身ははっきりとは言っていない。
でもその時の瑞稀の心境では、あの時の晴人の言葉は、晴人は子供を望んでいないと聞こえてしまっていたのだ。
「瑞稀、聞いてもいい?」
口を開いたのは晴人の方だった。
「はい」
「俺は千景君と同じように、先天的に出血したら止まりにくい体質だし、血液も特殊だ。この病気は子供の父方からしか遺伝しない。なぁ瑞稀、千景君は、いったい誰の子なんだ?」
今度こそ返事を聞かせてくれというように、晴人は瑞稀の目を真正面から、瞬きせず聞いた。
瑞稀はゴクリと唾を飲み込み、
「晴人さんの子どもです」
瞬きをせず、晴人の目を見て言った。
「そうか……」
晴人は特に驚きもせず、瑞稀の告白を受け入れる。
「どうして今まで言ってくれなかったんだ?」
「それは……晴人さんに迷惑をかけたくなかったんです」
「迷惑?」
晴人は眉を顰める。
「それどういう意味?」
「……」
「話してくれないとわからない」
声のトーンに苛立ちが感じられる。
「妊娠がわかった時、話そうと思ったんです。でも偶然奥様と会って、晴人さん、旦那様と奥様と連絡を取られてないって……」
「それと瑞稀の妊娠とどう関係があるんだ?」
先ほどまで隠そうとしていた苛立ちを、もう隠そうとはしない。
「晴人さんには許嫁の方がいらっしゃって、その方との話が進んでいると」
「じゃあ瑞稀は、俺に確認することなくそれを信じたの?」
「……はい……」
「どうして!?」
晴人は声を荒げその声が廊下に響き、晴人はハッと我に帰った。
「母さんのことだ。それだけ言いにきたんじゃないんだろ?」
いつものように、晴人は落ち着いて話す。
「実は……」
瑞稀は晴人の母親から手切れ金を突きつけられたこと。
晴人を不幸にしないでほしいと言われたこと。
話した。
「どうしてその話をしてくれなかったんだ? 俺が瑞稀といることで、どうして俺が不幸になるって思ったんだ? 一生一緒にいようと言ったのは、なんだったんだ?」
晴人が言いたいこと、聞きたいことは確かだ。
だがその時の瑞稀には、その選択肢を選ぶことはできなかった。
なぜなら……、
「晴人さんは、俺との子供、いらないのかと思って……」
まともに晴人の目が見れず、瑞稀は目を伏せて言った。
「はぁ?」
明らかに晴人の怒りの声が聞こえる。
「いつ、いつそんなこと言った?」
「晴人さんとお鍋を食べに行った時に……」
「そんな話、聞いてない」
「……」
晴人自身ははっきりとは言っていない。
でもその時の瑞稀の心境では、あの時の晴人の言葉は、晴人は子供を望んでいないと聞こえてしまっていたのだ。
14
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説
零れる
午後野つばな
BL
やさしく触れられて、泣きたくなったーー
あらすじ
十代の頃に両親を事故で亡くしたアオは、たったひとりで弟を育てていた。そんなある日、アオの前にひとりの男が現れてーー。
オメガに生まれたことを憎むアオと、“運命のつがい”の存在自体を否定するシオン。互いの存在を否定しながらも、惹かれ合うふたりは……。 運命とは、つがいとは何なのか。
★リバ描写があります。苦手なかたはご注意ください。
★オメガバースです。
★思わずハッと息を呑んでしまうほど美しいイラストはshivaさん(@kiringo69)に描いていただきました。
身代わりβの密やかなる恋
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
旧家に生まれた僕はαでもΩでもなかった。いくら美しい容姿だと言われても、βの僕は何の役にも立たない。ところがΩの姉が病死したことで、姉の許嫁だったαの元へ行くことになった。※他サイトにも掲載
[名家次男のα × 落ちぶれた旧家のβ(→Ω) / BL / R18]
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
Always in Love
水無瀬 蒼
BL
イケメンマネージャー×好感度抜群俳優
−−−−−−−−−−−−−−−
俳優の城崎柊真はマネージャーの壱岐颯矢のことが好きで、何度好きだと言っても相手にして貰えない。
ある日、颯矢がお見合いをしたと聞き、ショックを受ける。
ドラマの撮影でバンコクを訪れたとき、スリにあいそうになったところを現地駐在の小田島に助けられ、海外での生活の話を聞き、外国で暮らすことに興味をもつ
その矢先、白血病で入院していた母が他界してしまい、颯矢のショックと重なり芸能界引退を考える。
しかし社長と颯矢に反対され、颯矢と話し合おうとしたところで、工事現場から鉄材が落ちてきて柊真を庇った颯矢は頭を打ち…
−−−−−−−−−−−−−−−
2024.3.12〜4.23
その溺愛は伝わりづらい
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる