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噂 ②
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幸恵の話では、オメガの瑞稀は実はライバル企業の美人局で、内藤と晴人に色仕掛けで近寄り、二人を誘惑して仲違いをさせて、内側から企業を潰そうとしている。というものだった。
「そんな! 全くの嘘です! 僕はそんなことしてません!」
瑞稀は必死で幸恵と和子に訴える。
「ああもちろん! 私たちはそんな事思ってもいないし、そんな根も葉もない噂を流した人を取っ捕まえてやりたいよ」
「みんなの前で、瑞稀くんに謝らせてやりたい。でもね、噂なんてどこが元になったなんか、わからないのがほとんどなんだよ……」
悔しそうに和子が言う。
「今までそんな話なんてなかったのに、どうして急にこんな忌々しい噂がでたのか探ってみたらね、瑞稀くんが山﨑さんと話をした次の日、副社長と山﨑さんが口論になって、副社長が山﨑さんを殴って帰らせたって話があってね……。確かにその一件があって以来、あんなに二人三脚でしてきていた副社長と山﨑さん、よそよそしくなってしまっていてね……。私はそんな話に尾鰭がついたんじゃないかって思ってるんだよ」
「これも噂なんだけどね、今回の一件で副社長と山﨑さんの間に亀裂が入って、山﨑さんどこか違う支店に左遷されるんじゃないかって……」
「そんな……まさか……」
頭が真っ白になる。
「これはあくまで噂だし、本当のことはわからない。でも何かしらの決定事項がなければ、この噂は消えないと思うんだよ」
そんな……。
まさか……。
瑞稀の頭の中で、言葉がぐるぐる回る。
そして瑞稀の中で、朝の出来事に合点がいった。
「私たちは全力で瑞稀くんを助けていきたいと思っている。だから、もし瑞稀くんがこの噂が落ち着くまで仕事を休みたいって思うんだったら、休んだらいいと思うんだよ」
「瑞稀くんはどうしたい?」
この噂のせいで、心配そうに瑞稀を見つめる幸恵と和子にも、迷惑がかかっているかもしれない。
そう思うと、自分のせいで二人にまでよからぬ噂が流れてしまうのではないかと、申し訳なさでいっぱいだ。
自分が仕事を休めば噂は無くなるのか?
幸恵や和子に迷惑がかからないのか?
考えたが、瑞稀がどうしたって噂は止められない。
だったら、幸恵や和子に矛先が向かないように、噂の目を自分一人に向けさせた方が一番いいのではないかと思う。
「僕は今まで通り、ここで働きます。噂のこと、教えてくださり、ありがとうございます」
瑞稀は二人に頭を下げる。
「ですが僕が幸恵さんや和子さんと一緒に回れば、お二人にご迷惑が掛かるかもしれませんので、僕一人、別で回らせていただけないでしょうか?」
「迷惑だなんて、そんなことないよ」
「今までみたいに一緒に回ったらいいよ」
幸恵と和子はそう言うが、
「どうか僕のわがままだと思って……よろしくお願いします」
瑞稀にそう言われてしまうと、幸恵も和子も瑞稀の話を受け入れるしかなかった。
「そんな! 全くの嘘です! 僕はそんなことしてません!」
瑞稀は必死で幸恵と和子に訴える。
「ああもちろん! 私たちはそんな事思ってもいないし、そんな根も葉もない噂を流した人を取っ捕まえてやりたいよ」
「みんなの前で、瑞稀くんに謝らせてやりたい。でもね、噂なんてどこが元になったなんか、わからないのがほとんどなんだよ……」
悔しそうに和子が言う。
「今までそんな話なんてなかったのに、どうして急にこんな忌々しい噂がでたのか探ってみたらね、瑞稀くんが山﨑さんと話をした次の日、副社長と山﨑さんが口論になって、副社長が山﨑さんを殴って帰らせたって話があってね……。確かにその一件があって以来、あんなに二人三脚でしてきていた副社長と山﨑さん、よそよそしくなってしまっていてね……。私はそんな話に尾鰭がついたんじゃないかって思ってるんだよ」
「これも噂なんだけどね、今回の一件で副社長と山﨑さんの間に亀裂が入って、山﨑さんどこか違う支店に左遷されるんじゃないかって……」
「そんな……まさか……」
頭が真っ白になる。
「これはあくまで噂だし、本当のことはわからない。でも何かしらの決定事項がなければ、この噂は消えないと思うんだよ」
そんな……。
まさか……。
瑞稀の頭の中で、言葉がぐるぐる回る。
そして瑞稀の中で、朝の出来事に合点がいった。
「私たちは全力で瑞稀くんを助けていきたいと思っている。だから、もし瑞稀くんがこの噂が落ち着くまで仕事を休みたいって思うんだったら、休んだらいいと思うんだよ」
「瑞稀くんはどうしたい?」
この噂のせいで、心配そうに瑞稀を見つめる幸恵と和子にも、迷惑がかかっているかもしれない。
そう思うと、自分のせいで二人にまでよからぬ噂が流れてしまうのではないかと、申し訳なさでいっぱいだ。
自分が仕事を休めば噂は無くなるのか?
幸恵や和子に迷惑がかからないのか?
考えたが、瑞稀がどうしたって噂は止められない。
だったら、幸恵や和子に矛先が向かないように、噂の目を自分一人に向けさせた方が一番いいのではないかと思う。
「僕は今まで通り、ここで働きます。噂のこと、教えてくださり、ありがとうございます」
瑞稀は二人に頭を下げる。
「ですが僕が幸恵さんや和子さんと一緒に回れば、お二人にご迷惑が掛かるかもしれませんので、僕一人、別で回らせていただけないでしょうか?」
「迷惑だなんて、そんなことないよ」
「今までみたいに一緒に回ったらいいよ」
幸恵と和子はそう言うが、
「どうか僕のわがままだと思って……よろしくお願いします」
瑞稀にそう言われてしまうと、幸恵も和子も瑞稀の話を受け入れるしかなかった。
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