【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

文字の大きさ
上 下
104 / 202

お別れ遠足 ③

しおりを挟む
「雫は母親の妊娠で『赤ちゃん返り』ってのになって大変だったって……」
『赤ちゃん返り』
 子どもが自分でできていたことができなくなり、赤ちゃんだったときのような行動を取ることで、何かにつけて「イヤイヤ!」とごねだす。
    それは仕方の無いことだと頭でわかってても、その子の気持ちが落ち着くまで待つのは根気がいる。

母親が妊娠、出産時にはなりやすいって聞いたことがあるけれど、雫くんもそうだったんだ。

「でも千景くんと一緒に遊ぶようになってから、赤ちゃん返りがなくなったって姉さんから聞いてる。2人は本当に仲がいいんだな」
 優しい顔で昴は2人を見た。
 仕事場での昴は仕事も自分にも厳しく、いつも何かに集中している表情で、時折取っ付きにくい感じもする。だが今日の昴は笑顔が絶えず、雫と千景を見る目が優しく2人を包み込んでいるようだ。

「内藤さん、実はいい人だったんですね」
 ポロッと気持ちが言葉になってしまい、瑞稀は慌てて口を押さえる。
 瑞稀の発言に、一瞬、目を丸くした昴だったが、すぐに口を大きく開けアハハハハと笑った。
「成瀬さん、俺をどんな人間だと思ってた?」
 言ってしまったことは仕方ない。
 瑞稀は覚悟を決めた。
「いつも険しい顔をされていて、常に完璧を求める厳しい人だと思っていました…。失礼なことを言い、申し訳ありません…」
 瑞稀はそこまで一気に言い、昴を不快な気持ちにさせていないか、様子を伺う。
「アハハハ。成瀬さんは素直な人だね」
 楽しそうに昴は笑った。

「確かに会社では険しい顔になっている自覚はあるね」 
 いつもの自分を振り返るようなそぶりを、昴は見せた。
「俺、副社長の中ではダントツに若くてさ、どこに行っても『どうせ会長の孫だからだろ?』って目で見られるんだ。だからそれをどうしても払拭したくて、完璧を求めすぎていたのかもしれない…。そうか、俺はいつも険しい顔をしてるか……」
 また昴はアハハハと声を出して笑う。

「失礼なことを言ってしまって、すみません……」
「いや、そんなこと誰も教えてくれないから、本当に助かったよ。明日からは笑顔を心がける」
 ニカっと昴が笑った。
「その笑顔、素敵ですよ」
 またポロリと瑞稀の本音が口を突いてでた。
 昴は目を大きく見開き、
「本当にあなたって人は…」
 そう呟いて、切なそうに空を見上げた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

α嫌いのΩ、運命の番に出会う。

むむむめ
BL
目が合ったその瞬間から何かが変わっていく。 α嫌いのΩと、一目惚れしたαの話。 ほぼ初投稿です。

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

処理中です...