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お別れ遠足 ①
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瑞稀、晴人、千景の関係は進展することなく、再会してから3ヶ月が経ち、季節は春に向かう3月となっていた。
千景の保育園ではもうすぐ進級でのクラス替えの前に『お別れ遠足』という行事がある。
遠足の行き先は動物園で現地集合。
その日瑞稀は仕事を休み、朝から千景が好きなものばかりを詰め込んだ弁当を作った。
お別れ遠足を楽しみにしていた千景は、バスと電車で向かう最中、ずっと鼻歌を歌っていた。
動物園の入り口近くの集合所につくと、千景は誰かを探すようにキョロキョロする。
「何を探してるの?」
「え~っとね……。あ! 来たよ! 雫くんおはよ~」
千景の視線の先には、千景めがけて走ってくる雫の姿が。
そしてその後ろには……。
副社長?
昴の姿があった。
「千景くん、おはよ~」
「おはよ~。動物園楽しみ楽しみだね」
「うん! 楽しみ!」
千景と雫は両手を取り合って喜ぶ。
「成瀬さん、千景くんおはよう」
昴は雫から少し遅れて歩いてきた。
「副社長、おはようございます」
どうして動物園に昴がいるのか聞きたかったが、詮索するのもおかしいので聞くのをやめた。
「仕事場ではないし雫の付き添いとしてきているからここでは『副社長』と呼ぶのはやめないかい?」
「はい……ではなんとお呼びすればいいですか?」
「そうだな……『雫くんのおじさん』っていうのは長いから、苗字の『内藤』と呼んでもらえるかな?」
会社で昴は瑞稀から見れば雲の上のような人。
でも今日ここで『副社長』と呼べば、昴が瑞稀の派遣先の副社長であるということが、他の保護者に知れてしまう。
「内藤、さん……おはようございます……」
瑞稀は恐る恐る言う。
「そんなに怯えなくても」
瑞稀の怯える姿を見た昴がクククと笑う。
いつもの副社長としての威厳ではなく、甥っ子を可愛がる1人の叔父としての顔が垣間見れた。
「それじゃあ千景、そろそろ行こうか」
瑞稀が千景の手を繋ぐと、
「あのね、雫くんと一緒に行く約束してるんだ」
「ね~」
千景と雫はお互いの顔を見合わせ「ね~」と言いながら、笑顔で手を繋いでいた。
「え?」
「え?」
瑞稀も昴もそんなことは何も聞いていないし、昴とはまだ数回しか会っていない。
しかも仕事場では身分が違いすぎて、昴はいわば雲の上の人。
そう馴れ馴れしくできない。
気まずい雰囲気が流れる。
「ねぇママいいでしょ?」
「え~っと……」
チラッと昴を見ると、昴も困った顔をしている。
「ねぇ昴くんいいでしょ?」
「いいでしょ?」
「……え……」
可愛い甥っ子雫とブルーの瞳の千景に、うるうるした瞳で下から見上げられると、なんと答えていいか分からず困り果てている。
子ども達にそんな顔で訴えられたら、断れないよね。
眉を八の字にし困っている昴を見ていると、今度は瑞稀がクスクスと笑ってしまった。
「成瀬さん……どうします?」
「そうですね………」
ちらりと雫と千景を見ると、
「ね、ね、ね、ママお願い!」
「千景くんのママ。お願いお願いお願い」
可愛い天使達に拝まれてしまった。
自分の気持ちをなかなか言わない千景が、こんなにお願いするのは初めてだ。
それに雫にまでお願いされると、これはもう叶えてあげるしかない。
「そこまで言うなら……。内藤さん、もしよろしければ一緒に回っていただけますか?」
「え!? あ、ハイ! 喜んで!」
昴の顔も綻ぶ。
面白い人だな。
子ども達と一緒にはしゃぐ昴が、可愛くも見える。
今の姿が副社長の本当の姿なのかもしれない。
昴の存在が少し近くなった気がした。
千景の保育園ではもうすぐ進級でのクラス替えの前に『お別れ遠足』という行事がある。
遠足の行き先は動物園で現地集合。
その日瑞稀は仕事を休み、朝から千景が好きなものばかりを詰め込んだ弁当を作った。
お別れ遠足を楽しみにしていた千景は、バスと電車で向かう最中、ずっと鼻歌を歌っていた。
動物園の入り口近くの集合所につくと、千景は誰かを探すようにキョロキョロする。
「何を探してるの?」
「え~っとね……。あ! 来たよ! 雫くんおはよ~」
千景の視線の先には、千景めがけて走ってくる雫の姿が。
そしてその後ろには……。
副社長?
昴の姿があった。
「千景くん、おはよ~」
「おはよ~。動物園楽しみ楽しみだね」
「うん! 楽しみ!」
千景と雫は両手を取り合って喜ぶ。
「成瀬さん、千景くんおはよう」
昴は雫から少し遅れて歩いてきた。
「副社長、おはようございます」
どうして動物園に昴がいるのか聞きたかったが、詮索するのもおかしいので聞くのをやめた。
「仕事場ではないし雫の付き添いとしてきているからここでは『副社長』と呼ぶのはやめないかい?」
「はい……ではなんとお呼びすればいいですか?」
「そうだな……『雫くんのおじさん』っていうのは長いから、苗字の『内藤』と呼んでもらえるかな?」
会社で昴は瑞稀から見れば雲の上のような人。
でも今日ここで『副社長』と呼べば、昴が瑞稀の派遣先の副社長であるということが、他の保護者に知れてしまう。
「内藤、さん……おはようございます……」
瑞稀は恐る恐る言う。
「そんなに怯えなくても」
瑞稀の怯える姿を見た昴がクククと笑う。
いつもの副社長としての威厳ではなく、甥っ子を可愛がる1人の叔父としての顔が垣間見れた。
「それじゃあ千景、そろそろ行こうか」
瑞稀が千景の手を繋ぐと、
「あのね、雫くんと一緒に行く約束してるんだ」
「ね~」
千景と雫はお互いの顔を見合わせ「ね~」と言いながら、笑顔で手を繋いでいた。
「え?」
「え?」
瑞稀も昴もそんなことは何も聞いていないし、昴とはまだ数回しか会っていない。
しかも仕事場では身分が違いすぎて、昴はいわば雲の上の人。
そう馴れ馴れしくできない。
気まずい雰囲気が流れる。
「ねぇママいいでしょ?」
「え~っと……」
チラッと昴を見ると、昴も困った顔をしている。
「ねぇ昴くんいいでしょ?」
「いいでしょ?」
「……え……」
可愛い甥っ子雫とブルーの瞳の千景に、うるうるした瞳で下から見上げられると、なんと答えていいか分からず困り果てている。
子ども達にそんな顔で訴えられたら、断れないよね。
眉を八の字にし困っている昴を見ていると、今度は瑞稀がクスクスと笑ってしまった。
「成瀬さん……どうします?」
「そうですね………」
ちらりと雫と千景を見ると、
「ね、ね、ね、ママお願い!」
「千景くんのママ。お願いお願いお願い」
可愛い天使達に拝まれてしまった。
自分の気持ちをなかなか言わない千景が、こんなにお願いするのは初めてだ。
それに雫にまでお願いされると、これはもう叶えてあげるしかない。
「そこまで言うなら……。内藤さん、もしよろしければ一緒に回っていただけますか?」
「え!? あ、ハイ! 喜んで!」
昴の顔も綻ぶ。
面白い人だな。
子ども達と一緒にはしゃぐ昴が、可愛くも見える。
今の姿が副社長の本当の姿なのかもしれない。
昴の存在が少し近くなった気がした。
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