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山﨑晴人 ⑦

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 いつも以上に、晴人は集中して仕事に取り組んだ。
 そうでもしないと、瑞稀のことばかり考えてしまって仕事にならなさそうだったから。

 ひっきりなしに色々な企業の役員が、昴に挨拶に来ていたが、本当のところは『どんな若造が副社長になったんだ?』『どうせ一族だからだろ?』という気持ちが、笑顔の下から垣間見える。

「失礼な人たちばかりでしたね」
 最後の客を送り出し、自分のデスクに座った昴にコーヒーを渡しながら、晴人は毒づく。
「あはは、みんな気持ちを隠すのが得意じゃないだけじゃない?」
 昴が茶化すと、
「副社長のこと何も知らないくせに、言いたい放題。何様なんでしょうね」
 こんなに毒づく晴人は珍しい。
 自分のことならともかく、尊敬する昴がきちんと評価されないのは嫌なようだ。
「もしかして晴人、ずっとそんなこと考えながら接客してた?」
「はい。顔に出てましたか?」

それは少しまずいな。

 いくらイラっとしても、顔に出さないのが秘書に必要とされるところだ。
「いや、全然わからなかった。だから、今晴人がそんなことを言ってるのに驚いたよ。名演技だったと思うぞ」
 楽しそうに昴は笑った。
 
 客人を接客中、言葉選びにミスはできず、適度な緊張感が、今日の晴人にはちょうどよかった。
 ホッと一息入れると、すぐに瑞稀のことが頭をよぎる。

瑞稀は今どうしているだろうか?

 瑞稀の居場所がわからない時も、同じことを考えていた。
 だが今は瑞稀の居場所はわかっている。
 しかも瑞稀と晴人は同じビルの中にいる。

早く会いたい。

 そう思うが、瑞稀からの連絡がない限り、どんなに近くにいても会うことはできない。
 もどかしい。
 だからと言って、急に瑞稀に近寄ろうとしては怖がらせるだけだし、もう会ってもらえないかもしれない。
 それだけは避けたかった。

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