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千景からのお返し ①

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 次の日。
 瑞稀は『お渡ししたいものがあるので、お昼少しお時間いただけませんか?』と晴人にメッセージを送り、昼休みに副社長室のあるフロアーの内の階段で待ち合わせをした。

「ごめん瑞稀、待たせたね」

 晴人は約束の時間ピッタリに待ち合わせ場所に着いたが、瑞稀はいつも晴人が待ち合わせより5分早めに来ていることを晴人は知っている。

「いえ、お忙しいのにお呼びだてしてしまい、すみません」

 晴人は副社長の秘書。
 昼休みがあってないようなものだ。

「あの、昨日はクッキー、ありがとうございました。同僚と息子と一緒にいただきました。それで、あの、これ……」

 瑞稀は手に持っていた『雪だるま』の折り紙を、晴人の前に出した。

「息子がクッキーのお礼に渡して欲しいと……」

「……」

 目を丸くし無言のまま、晴人は折り紙を見つめる。

子どもが作った折り紙は、やっぱり迷惑だよね……。

 そう思うが、千景が一生懸命心を込めて作っていた姿を思い出すと、瑞稀の胸がチクリとした。

「子どもが作ったものなんて、やっぱりご迷惑でしたよね……。すみません……」

 瑞稀が折り紙を引き戻そうとした時、晴人がその手をパッと掴んだ。


「嬉しい! 嬉しいよ。俺がもらってもいいの?」

 キラキラした瞳で晴人は折り紙と瑞稀を交互に見た。

「え?」
 
さっき無言で見つめていたのは、迷惑だったわけじゃないの?

「ご迷惑じゃ……」

「迷惑なんてあり得ない。本当に嬉しいよ」

 瑞稀から受け取ると、晴人は大切そうに折り紙を撫でる。

「内ポケットに入れておいたら、シワにならないかな?」

 と言いながら、晴人はスーツの内ポケットにそっと入れた。

「千景くんの優しいところは、瑞稀に似たのかな?」

 晴人そう言ったが、瑞稀は

——晴人さんに似たと思いますよ——

 心の中で、そう呟いた。
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