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再会 ②
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副社長室に向かう最中、瑞稀は幸恵が話していた『副社長秘書』のことが気になっていた。
名前は確か『山崎』さん。
山崎って名前は珍しくないから、晴人さんではないと思う。
でも本当に晴人さんだったら……。
あんなさり方をして自分勝手だと思うが、幸恵が言う『山崎』が『晴人』だったら、少しでいいから会いたいとも思ってしまう。
面と向かってじゃなくていい。
どこかの片隅から、そっと見つめみたい。
離れていても、瑞稀は晴人をずっと愛している。
それは晴人と出会った時から、今でも変わらない。
晴人さんに会いたい。
でもどんな顔をしてあえばいいのか……。
一度は晴人さんのことを、完全に忘れようとした。
諦めようとした。
だけど、もし……もし、もう一度、一瞬だけでも晴人さんの姿を見れることができたなら……。
そんなことを考えているうちに、副社長室の前に着く。
晴人に会いたい。会いたくない。会うことなんて許されない……。
希望と不安が入り混じる。
瑞稀はふぅ~と大きく深呼吸し、コンコンと副社長室の扉をノックし、
「清掃のものです。今、よろしいでしょうか?」
室内に聞こえるように、声をかけた。
「……」
どの役員室もすぐに返事があるのに、この副社長室からは、なんの反応もない。
聞こえなかったのかな?
「清掃のものです。今……」
瑞稀がそこまで言った時、なんの声がけもなく唐突にドアが開いた。
「!!」
一瞬何が起こったかわからず、瑞稀が目を瞬いた次の瞬間、
「え……?」
瑞稀はドアを開けた人を見て目を見開くと、今どういう状況なのか把握できないほどに驚き、ただ立ち尽くす。
「内藤、さん……?ー
瑞稀の目の前に立っていたのは、昨日、千景の保育園であった内藤だった。
え? どうしてここに?
突然の昨日、千景が通う保育園で出会った内藤の出現に、瑞稀はたじろぐ。
すると内藤の後から誰かが駆けてくる足音がしたかと思うと、
「瑞……稀……?」
晴人が立っていた。
「!! 晴人、さん……?」
晴人の聞いた瑞稀は、昴の背後にいた晴人を見て、さらに大きく目を見開き持っていた掃除具をガシャンと床に落とし息をのむ。
「晴人……さん……」
瑞稀の目に、じわりと涙が浮かぶ。
本当に、晴人さん……?
本当に? 本当に晴人さん?
それとも幻?
晴人から目が離せず、体が動かない。
「瑞稀、なのか……?」
晴人の声は震えている。
「本当に瑞稀なのか?」
瑞稀の方に、晴人が一歩近づく。
そしてもう一歩、瑞稀に近づき、晴人が手を伸ばした時、昴がその腕を掴む。
「晴人、『瑞稀』って、あの『瑞稀くん』なの、か?」
昴は晴人を凝視する。
「はい。そうです」
しっかりと確信を持ち、晴人が答えた。
「先輩、退いてください」
晴人が昴を鋭い視線でみると、
!!
ここにはいられない!
ハッと我に帰った瑞稀は何も言わず、掃除用具もそのままに、その場から逃げるように駆け出した。
名前は確か『山崎』さん。
山崎って名前は珍しくないから、晴人さんではないと思う。
でも本当に晴人さんだったら……。
あんなさり方をして自分勝手だと思うが、幸恵が言う『山崎』が『晴人』だったら、少しでいいから会いたいとも思ってしまう。
面と向かってじゃなくていい。
どこかの片隅から、そっと見つめみたい。
離れていても、瑞稀は晴人をずっと愛している。
それは晴人と出会った時から、今でも変わらない。
晴人さんに会いたい。
でもどんな顔をしてあえばいいのか……。
一度は晴人さんのことを、完全に忘れようとした。
諦めようとした。
だけど、もし……もし、もう一度、一瞬だけでも晴人さんの姿を見れることができたなら……。
そんなことを考えているうちに、副社長室の前に着く。
晴人に会いたい。会いたくない。会うことなんて許されない……。
希望と不安が入り混じる。
瑞稀はふぅ~と大きく深呼吸し、コンコンと副社長室の扉をノックし、
「清掃のものです。今、よろしいでしょうか?」
室内に聞こえるように、声をかけた。
「……」
どの役員室もすぐに返事があるのに、この副社長室からは、なんの反応もない。
聞こえなかったのかな?
「清掃のものです。今……」
瑞稀がそこまで言った時、なんの声がけもなく唐突にドアが開いた。
「!!」
一瞬何が起こったかわからず、瑞稀が目を瞬いた次の瞬間、
「え……?」
瑞稀はドアを開けた人を見て目を見開くと、今どういう状況なのか把握できないほどに驚き、ただ立ち尽くす。
「内藤、さん……?ー
瑞稀の目の前に立っていたのは、昨日、千景の保育園であった内藤だった。
え? どうしてここに?
突然の昨日、千景が通う保育園で出会った内藤の出現に、瑞稀はたじろぐ。
すると内藤の後から誰かが駆けてくる足音がしたかと思うと、
「瑞……稀……?」
晴人が立っていた。
「!! 晴人、さん……?」
晴人の聞いた瑞稀は、昴の背後にいた晴人を見て、さらに大きく目を見開き持っていた掃除具をガシャンと床に落とし息をのむ。
「晴人……さん……」
瑞稀の目に、じわりと涙が浮かぶ。
本当に、晴人さん……?
本当に? 本当に晴人さん?
それとも幻?
晴人から目が離せず、体が動かない。
「瑞稀、なのか……?」
晴人の声は震えている。
「本当に瑞稀なのか?」
瑞稀の方に、晴人が一歩近づく。
そしてもう一歩、瑞稀に近づき、晴人が手を伸ばした時、昴がその腕を掴む。
「晴人、『瑞稀』って、あの『瑞稀くん』なの、か?」
昴は晴人を凝視する。
「はい。そうです」
しっかりと確信を持ち、晴人が答えた。
「先輩、退いてください」
晴人が昴を鋭い視線でみると、
!!
ここにはいられない!
ハッと我に帰った瑞稀は何も言わず、掃除用具もそのままに、その場から逃げるように駆け出した。
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