【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

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雪の日の出会い ④

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「特に何料理とかはないですが、唐揚げとかハンバーグとか…。どうしても子供が好きなメニューになってしまいます」

「唐揚げとハンバーグ、私も好きです」

 昴はキラキラした目で瑞稀を見るが、圧が凄い。

「そう…なんですね…」

「ええ。美味しいですよね、唐揚げにハンバーグ」

「ええ…」

「コツとか、あるんですか?」

「コツですか?…多分皆さんされてると思いますが、唐揚げは下味をしっかりつけることと、ハンバーグは玉ねぎをよく炒めて、粗熱を取ってからミンチと混ぜること…かと…」

「そうんですね。凄い!」

 どうしてそんなにキラキラした目で見られているのか、なにが凄いのかわからないが、とにかく昴は瑞稀の話を一字一句漏らすまいと、身を乗り出して聞いている。

「そうだよ。ママのご飯は、ぜ~んぶ美味しいよ。僕、パパいないから、ママのご飯いっぱい食べて大きくなったら、僕がママを守ってあげるんだ」

 千景が胸を張った。

千景がそんなことを思ってくれてたなんて…。

 瑞稀の目頭が熱くなる。

「え?千景くん、パパいないの?」

 驚いたように昴が聞くと、
「うん、いないよ。僕とママだけ」

 千景は屈託の笑顔を浮かべた。

その笑い方、晴人さんそっくり。

 ふと晴人の笑い顔を思い出し、懐かしくなる。

今、晴人さんはどうしてるんだろう?
もうお子さんはいらっしゃるんだろうか?
ご実家の病院は継がれたのかな?

 この4年。
 晴人のことを思い出さない日はなかった。
 はじめのうちは、晴人のことを思い出すと涙が溢れてきたが、時が経つにつれ、晴人が幸せな家庭を築き暮らしている姿を願うようになっていた。

「成瀬さん…あの…随分不躾ぶしつけなことをお聞きしますが…、今、お付き合いしている方は……」

 昴がそこまで言った時、

「あ!」

 千景がドラッグストアを指差す。

 そのまま車は店の駐車場で停まる。

「ママ、すぐに着いちゃったね」

 と残念そうな千景。

「歩いたら遠いのに、車だとすぐに着いちゃったね」

 瑞稀は千景と自分の鞄を手に持つ。

「雫くん、今日は千景と遊んでくれてありがとう。また仲良くしてやってね」

 雫の方を瑞稀が見ると、雫は恥ずかしそうに頷いた。

「今日はわざわざ送ってくださり、ありがとうございます。本当に助かりました」

 微笑みを浮かべ、瑞稀が礼を言うと、

「いえいえ、そんな…」

 昴は顔を赤くした。

「千景、皆さんにご挨拶して」

「雫くん、昴くん、運転してくれたお兄ちゃん、ありがとうございました」

 千景はペコリと下げ二人は降り、駐車場を出て行く車を見送った。

そう言えば、内藤さんは結局何が聞きたかったんんだろう?

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