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最後のデート ②
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公園ではしゃぎ過ぎたのか、帰りの車で瑞稀は寝てしまい、結局買い物はせずにマンションに着いた。
瑞稀が申し訳なさそうに晴人に謝ると、
「こんなこともあるかと…」と、晴人は事前に晩御飯の買い物を済ませていた。
メニューは『豚しゃぶ』
外食の時、瑞稀がたくさん食べたことが晴人はよほど嬉しかったのだろう。
具材など、店で食べた鍋を忠実に作っていた。
瑞稀は本当に愛されていると思った。
嬉しかった。
そして自分も晴人に負けないぐらい、晴人のことを愛していると思った。
だからこそ…。
着実に時を進めていく時計のはりを、瑞稀は見つめた。
「美味し過ぎました…」
食べ過ぎたお腹を瑞稀が摩ると、
「お粗末さまでした」
楽しげに晴人は笑い、食器を下げ片付け始める。
「あ、僕が片付けます」
と、シンクの前まで来ると、
「瑞稀はゆっくりしてて」
ひょいっと晴人が瑞稀を抱き上げ、ソファーに座らせる。
「お風呂の用意できてるから、先に入っておいで」
いつの間に用意されていたのだろうか。晴人は瑞稀にパジャマセットを渡す。
「でも…、全部晴人さんがしてくださってて…」
申し訳なさそうに瑞稀が言うと、
「俺は瑞稀の元気で楽しそうな顔が見られたら、それでいい。だから眠くなる前に入っておいで。あ、お姫様抱っこっでお風呂にいく?」
悪戯っぽく晴人が笑う。
「もう1人で行けます」
瑞稀は頬を膨らませながら、バスルームに向かった。
入浴後、本当は映画を観る予定だったが、瑞稀の体力が限界だったので、延期となった。
寝る支度を済ませると、2人ベッドで横になる。
「おやすみ瑞稀」
いつものように、晴人は瑞稀の額にキスをする。
「晴人さん、おやすみなさい」
いつもの瑞稀なら、お腹の膨らみに気づかれないように、そのまま眼を瞑るが、今日の瑞稀は自分から晴人の胸の中に顔を埋める。
「ん?どうした?眠れない?」
晴人は優しく瑞稀の頭を撫でると、瑞稀はフルフルと首を横に振る。
「今日は晴人の胸の中で眠りたいんです…」
より晴人に抱きついた。
息を大きく吸い込むと、愛しい晴人の香りが鼻腔をくすぐる。
瑞稀の中でぶわ~っと、幸せな気持ちと、もう二度とこの腕に抱き締めてもらえることがないことをへの悲しみが込み上げてきて、涙が溢れた。
「晴人さん、大好きです」
涙を見られないように、瑞稀はより晴人に抱きつく。
「うん。俺も瑞稀のことが大好きだよ」
晴人は瑞稀の背中を撫でた。
掌から伝わる体温が、瑞稀を包み込む。
ありがとう晴人さん…。
そう心の中でつぶやくと、瑞稀は瞳を閉じた。
瑞稀が申し訳なさそうに晴人に謝ると、
「こんなこともあるかと…」と、晴人は事前に晩御飯の買い物を済ませていた。
メニューは『豚しゃぶ』
外食の時、瑞稀がたくさん食べたことが晴人はよほど嬉しかったのだろう。
具材など、店で食べた鍋を忠実に作っていた。
瑞稀は本当に愛されていると思った。
嬉しかった。
そして自分も晴人に負けないぐらい、晴人のことを愛していると思った。
だからこそ…。
着実に時を進めていく時計のはりを、瑞稀は見つめた。
「美味し過ぎました…」
食べ過ぎたお腹を瑞稀が摩ると、
「お粗末さまでした」
楽しげに晴人は笑い、食器を下げ片付け始める。
「あ、僕が片付けます」
と、シンクの前まで来ると、
「瑞稀はゆっくりしてて」
ひょいっと晴人が瑞稀を抱き上げ、ソファーに座らせる。
「お風呂の用意できてるから、先に入っておいで」
いつの間に用意されていたのだろうか。晴人は瑞稀にパジャマセットを渡す。
「でも…、全部晴人さんがしてくださってて…」
申し訳なさそうに瑞稀が言うと、
「俺は瑞稀の元気で楽しそうな顔が見られたら、それでいい。だから眠くなる前に入っておいで。あ、お姫様抱っこっでお風呂にいく?」
悪戯っぽく晴人が笑う。
「もう1人で行けます」
瑞稀は頬を膨らませながら、バスルームに向かった。
入浴後、本当は映画を観る予定だったが、瑞稀の体力が限界だったので、延期となった。
寝る支度を済ませると、2人ベッドで横になる。
「おやすみ瑞稀」
いつものように、晴人は瑞稀の額にキスをする。
「晴人さん、おやすみなさい」
いつもの瑞稀なら、お腹の膨らみに気づかれないように、そのまま眼を瞑るが、今日の瑞稀は自分から晴人の胸の中に顔を埋める。
「ん?どうした?眠れない?」
晴人は優しく瑞稀の頭を撫でると、瑞稀はフルフルと首を横に振る。
「今日は晴人の胸の中で眠りたいんです…」
より晴人に抱きついた。
息を大きく吸い込むと、愛しい晴人の香りが鼻腔をくすぐる。
瑞稀の中でぶわ~っと、幸せな気持ちと、もう二度とこの腕に抱き締めてもらえることがないことをへの悲しみが込み上げてきて、涙が溢れた。
「晴人さん、大好きです」
涙を見られないように、瑞稀はより晴人に抱きつく。
「うん。俺も瑞稀のことが大好きだよ」
晴人は瑞稀の背中を撫でた。
掌から伝わる体温が、瑞稀を包み込む。
ありがとう晴人さん…。
そう心の中でつぶやくと、瑞稀は瞳を閉じた。
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