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そんな… ③

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晴人さんはこんなに僕の事を考えてくれているのに、僕は晴人さんに秘密にしている事だらけ。
僕がこんなに秘密だらけだと、晴人さんが気づいたら、幻滅されてしまう。
今、向けてくれている眼差しも、優しく撫でてくれる手も、もう僕には向けてくれないんだ…。
そんなの嫌だ!!

 そう思うが、

僕が悪いんだ…。
僕がそうさせてしまったんだ…。
僕なんかが晴人さんの隣にいていいわけない…。

 とも思ってしまう。

「瑞稀、ずっとそばにいてくれ…」

 晴人が瑞稀を引き寄せ、抱きしめた。
 久しぶりに感じる晴人の体温。
 トクントクンと心音が聞こえてきそうで、すさんだ心が癒されていく。

僕は晴人の隣ここが好き。
でも、僕は晴人の隣ここには、もういられない…。
晴人さんは、素敵な方と結婚して、素敵な家族を築いて、立派な病院の院長先生になって、たくさんの人を救うんだ。
僕が晴人さんを独り占めなんて、してはいけない…。
だから最後に…。

「あの、晴人さん…」

 抱きしめられながら、瑞稀は晴人を見上げる。

「ん?」

「来週のお休みって、いつですか?」

「来週?来週は確か…金曜だったかな?でもどうした?」

「その日、僕もお休みを取るので、久しぶりに家で二人ゆっくり過ごしませんか?」

「え?」

「前みたいに二人でお料理して、二人で散歩したり、映画も観たいです。その日・・・は、晴人さんとずっと一緒にいたいです」

 
『その日』は…。
その日だけは、朝から眠るまでずっと一緒にいたい。
『その日』だけは…。

「ああ!そうしよう!瑞稀はなにが食べたい?材料買っておくよ。観る映画も決めておこうか。でもその日の気分できめるのもいいな…。それから…、それから…」

 期待で胸を膨らませた晴人が、生き生きと話だす。
 そんな晴人の横顔が、瑞稀には眩しく見えた。
 キラキラ輝いている晴人この人のそばにずっといたいと思った。
 二人どこか誰も知らないところに、行ってしまいたいと思った。

大好きだ…。
愛してる…。

 愛してるからこそ、晴人の幸せを、未来を、自分の勝手で壊してはいけないと思った。

「楽しみですね」

 瑞稀が言うと、

「ああ、本当に。明日が金曜ならいいのに」

 少年のように晴人が笑った。

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