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体調不良 ③

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 病院は大きく内科、耳鼻科、皮膚科、眼科などから、産科、婦人科、バース科まである。

立ちくらみは内科…かな?

 受付で問診票を記入し、内科の前の椅子に座り名前が呼ばれるのを待った。

「成瀬さん、どうぞ」

 看護師によばれ診察室に入る。

「こんにちは。今日はどうされましたか?」

 瑞稀の前にいたのは、温和な声のおじいちゃん先生。

「僕が大袈裟なのかもしれなせんが、最近立ちくらみが酷くて…。今日は特別酷くて、目の前が真っ白になって倒れそうになりました」

 瑞稀は病院が苦手だ。
 以前体調不良で受診した時、瑞稀を診た医師から「こんなことで来たの?」と言われ、それから自分はしんどいと思っていても、世間一般からしては大したことがなくて、『こんなことで受診するのは、自分が大袈裟なのかもしれない…』と思ってしまうからだ。

「そうなのですね。それは辛い思いをされましたね」

 医師は瑞稀に寄り添うように言う。

「僕、大袈裟ではないですか?」

 そんなことを聞いても、瑞稀の本当のしんどさはわからないのに、聞いてしまう。

「大袈裟ではないですよ。人それぞれ感じ方は違いますが、不調を感じたれたと言うことは、あなたにとって大変辛いことだと、私は思っています」

 医師はしっかりと瑞稀の目を見ていう。

この先生なら、自他の症状を言っても大丈夫かもしれない…。

「先生、実は他にも体調不良がありまして…」

「他に何がありますか?」

「実は…」

 食欲不振、胸焼け、体に熱がこもるような感覚があることを伝えると、

「あなたはオメガですね?ヒートはいつきましたか?」

「5月です」

「ヒートは定期的にやってきますか?」

「まだ2回しかきていないので、正確にはわかりませんが、1回目と2回目はだいたい3ヶ月空いていました」

「そうですか…」

 医師はPCにそれを打ちこむ。

「ヒートの時、性交渉はありましたか?」

 際どい質問に、一瞬返答に戸惑ったが、

「はい」

 と答えた。

「なるほど…。それでは一度、ニ階にある産科を受診していてください」

「え…?」

「私は内科ですので詳しい診断はくだせませんが、今、成瀬さんが不快に思われている症状は『つわり』かも知れません」

「え!?…つわり…ですか…?」

つわりって…妊娠した時にでる、症状…?

「もしそこで診断がくだされなければ、また内科ここに戻ってきてもらえませんか?」
「……」
 
もし『つわり』だったら…。

 まだ結婚もしていない上に、番にもなっていないのに、妊娠したと晴人に伝えればどんな反応をされるか…と不安が募る。
 不安をかき消すように、チェーンをつけ首からぶら下げている晴人からの指輪に触った。

「この病院には妊娠をフォローするところもあります。そこで相談もできますよ」

「…」

「まずは不快な症状の原因を探すことが、一番ですよ」

 瑞稀の不安を取り除くように、医師は微笑んだ。
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