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2度目の… ③

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嫌だ…嫌だ…。

 本能のまま動いてしまう腰も、指も嫌で仕方ない。
 だが擦らずにはいられない。
 もう片方の手で、楔を握り上下する。

「はぁ……ぁぁ……」

 吐息が漏れ出す。
 
こんな姿…晴人さんには見せたくない…。

 晴人の香りがする衣服に埋もれ、自慰をしてしまうことが、晴人の事を汚しているようで、ヒートになり本能のまま流されている瑞稀自身が穢らわしく感じる。
 
「ぅぅ…」

 涙が溢れた。
 涙が溢れるのに楔を擦る手も、弱いところを押し上げる指も止まらない。

「あ……ッぁぁ……」

 優しく触れてくれる晴人の手ではなく、自分の手。
 悲しさと虚しさが胸を締め付ける。
 
「助けて…晴人さん…」
 静まり返った部屋の中、消えかけた声で、晴人の名前を呼ぶ。
 自分で刺激を与えるが、達することができない。
 火照り、内側から疼く身体をどうすることもできず、だた瑞稀の香りだけが濃くなっていく。

 暗い部屋に1人、どのぐらいいただろう…。

「瑞稀!」

 バタンっと勢いよく開けられたドアから、息を切らした晴人が飛び込んで来た。

晴人さん!

 あれだけ晴人に会いたかったのに、本能に飲まれ、自慰さえしてしまった今の自分の姿をさらすのがいたたまれず、瑞稀は晴人の服の中に隠れる。

「瑞稀…」

 優しい晴人の声と、ゆっくりとした足音が聞こえる。

「辛くて怖かったのに、よく頑張ったね」

 瑞稀には、服の上から晴人が瑞稀を撫でているのがわかった。

「瑞稀、出てこられる?」

 晴人は穏やかな口調で話しかけるが、服の中に隠れている瑞稀は首を横に振り、服が横に触れる。

「どうして?」

 なおも晴人は優しく語りかけると、

「こんな姿…晴人さんに見せられない…」

 本能に流される自分が情けなくて、涙声になる。

「大丈夫。俺はどんな瑞稀でも愛してる」

 晴人は服の上から、瑞稀を抱きしめた。

「それにね、瑞稀が俺の服を集めて、巣作りしてくれていて本当に嬉しいよ」

「……」

「出ておいで、愛しい瑞稀…」

「……」

 たくさんの服の中から、瑞稀は顔だけ出した。

「ただいま」

 晴人が微笑みながら言うと、

「お帰りなさい…」

 瑞稀は服で体を隠しながら、晴人の胸に飛び込んだ。

「ただいま」

 晴人はもう一度言い、瑞稀の髪にキスをする。
 瑞稀の心の中に、温かなものが流れてくる。
 情けなさや自分に対する嫌悪感も、溶かしてくれる。そんな温かさ。

「大事な日なのに、こんなことになってしまって、ごめんなさい…」

「瑞稀は何も悪くない。俺の方こそ、瑞稀が辛い時にそばにいてやれなくて、ごめん」

 瑞稀の背中を晴人がさする。

「そんな……。あ!かすみさん!かすみさんはどうしていますか?」

かすみさんに迷惑ばかりかけてしまって…。
僕は自分のことばかり…。
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