23 / 202
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「いらっしゃいませ」
店のドアが開かれると、瑞稀が笑顔で客を迎える。
「瑞稀くん、こんばんは」
「奈子さん、こんばんは」
常連客の奈子を、瑞稀は笑顔を出迎えた。
奈子は晴人と同じ病院で、晴人と同じ『バース科』の看護師。
「今日、瑞稀くんに会いに行くって山崎先生に言ったら、羨ましがられてよ。山崎先生、今日は学会だしお店に寄れないから、かなり残念そうにしてたわよ。山崎先生は、本当に瑞稀くんに毎日会いたいみたい。瑞稀くんも山崎先生に会いたい?」
奈子の言う『山崎先生』とは晴人のこと。
奈子はにっこり笑うと、
「はい…」
恥ずかしそうに瑞稀が答える。
瑞稀と晴人が付き合っていることは知っているが、二人が一緒に住んでいることは、オーナーとかすみなど、本当に親しい人しか言っておらず、瑞稀はごまかすように照れ笑いをする。
そして注文を聞く前に、冷えたガラスのビールグラスを取り出し、濃色ビールと淡色ビルを1:1で注ぎ一混ぜして、奈子の前に出す。
「瑞稀くんのハーフ&ハーフ、大好きなんだ」
ごくごくと飲む姿は、本当のビール好きだ。
奈子はどうやら病院では瑞稀のバーでの様子を晴人にしているようで、自分が知らない瑞稀を奈子が知っていることを、悔しがる晴人の姿を瑞稀に報告するのが好きなようだ。
「いつも冷静で大人な山崎先生に、瑞稀くんの話をすると嬉しそうに微笑んだり、拗ねたりするのって、本当に面白いんだから…って、この話は山崎先生には秘密ね」
奈子は人差し指を一本たて唇に当てると『シー』っとし、それから楽しそうに笑う。
自分の知らないちょっとした晴人の表情の変化を、奈子は知っていて瑞稀は羨ましいと思う。
仕事をしている時の晴人さんって、どんな感じなんだろう?
オメガの薬を処方されに行く時だけ、晴人の病院に行くが、いつも真剣な顔で仕事をしている晴人のことを直視できず、結局、仕事中の晴人の様子をいつも見逃していた。
「山崎先生、瑞稀くんからの『愛妻弁当』がある時は、食べる時が一番幸せそうで、絶対に手を合わせて『いただきます』っていうんだよ。可愛くない?」
確かにそんな晴人さんは可愛いし、僕のつくったお弁当を食べてくれるのは嬉しいけど、僕だってもっと可愛い晴人さん、知ってるもん。
奈子の話に少しヤキモチを妬いてしまい、知らず知らずの間に、瑞稀は頬を膨らましまう。
「うふふ、本当に仲がいいのね」
奈子が言うと、
「ですよね~。あ~私も、素敵な恋人が欲しい」
かすみが話に入ってくる。
「わかる!」
奈子がかすみの手をとり、2人で『うんうん』と頷く。
もうこうなれば2人の恋バナに、瑞稀が巻き込まれる…と言うのが定番になっていた。
店のドアが開かれると、瑞稀が笑顔で客を迎える。
「瑞稀くん、こんばんは」
「奈子さん、こんばんは」
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奈子は晴人と同じ病院で、晴人と同じ『バース科』の看護師。
「今日、瑞稀くんに会いに行くって山崎先生に言ったら、羨ましがられてよ。山崎先生、今日は学会だしお店に寄れないから、かなり残念そうにしてたわよ。山崎先生は、本当に瑞稀くんに毎日会いたいみたい。瑞稀くんも山崎先生に会いたい?」
奈子の言う『山崎先生』とは晴人のこと。
奈子はにっこり笑うと、
「はい…」
恥ずかしそうに瑞稀が答える。
瑞稀と晴人が付き合っていることは知っているが、二人が一緒に住んでいることは、オーナーとかすみなど、本当に親しい人しか言っておらず、瑞稀はごまかすように照れ笑いをする。
そして注文を聞く前に、冷えたガラスのビールグラスを取り出し、濃色ビールと淡色ビルを1:1で注ぎ一混ぜして、奈子の前に出す。
「瑞稀くんのハーフ&ハーフ、大好きなんだ」
ごくごくと飲む姿は、本当のビール好きだ。
奈子はどうやら病院では瑞稀のバーでの様子を晴人にしているようで、自分が知らない瑞稀を奈子が知っていることを、悔しがる晴人の姿を瑞稀に報告するのが好きなようだ。
「いつも冷静で大人な山崎先生に、瑞稀くんの話をすると嬉しそうに微笑んだり、拗ねたりするのって、本当に面白いんだから…って、この話は山崎先生には秘密ね」
奈子は人差し指を一本たて唇に当てると『シー』っとし、それから楽しそうに笑う。
自分の知らないちょっとした晴人の表情の変化を、奈子は知っていて瑞稀は羨ましいと思う。
仕事をしている時の晴人さんって、どんな感じなんだろう?
オメガの薬を処方されに行く時だけ、晴人の病院に行くが、いつも真剣な顔で仕事をしている晴人のことを直視できず、結局、仕事中の晴人の様子をいつも見逃していた。
「山崎先生、瑞稀くんからの『愛妻弁当』がある時は、食べる時が一番幸せそうで、絶対に手を合わせて『いただきます』っていうんだよ。可愛くない?」
確かにそんな晴人さんは可愛いし、僕のつくったお弁当を食べてくれるのは嬉しいけど、僕だってもっと可愛い晴人さん、知ってるもん。
奈子の話に少しヤキモチを妬いてしまい、知らず知らずの間に、瑞稀は頬を膨らましまう。
「うふふ、本当に仲がいいのね」
奈子が言うと、
「ですよね~。あ~私も、素敵な恋人が欲しい」
かすみが話に入ってくる。
「わかる!」
奈子がかすみの手をとり、2人で『うんうん』と頷く。
もうこうなれば2人の恋バナに、瑞稀が巻き込まれる…と言うのが定番になっていた。
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