【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

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21 / 202

同棲生活

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 同棲を始めて数日経った、今は午前6時ごろ。
 瑞稀のアラームは太陽が昇るより前に鳴った。
 瑞稀を背後から抱きしめるように眠る晴人からは、規則正しい寝息が聞こえる。

晴人さん、おはようございます。

 心の中で瑞稀はそう呟き、2人揃って食べる朝食と晴人の弁当を作るため、ベッドから起きあがろうとすると、

!!

 晴人は瑞稀を抱きしめる力を強める。

 起こしてしまったか?と瑞稀は振り返るが、晴人は目をしっかり閉じ、眠ったままだ。

よかった。
ここのところ忙しいそうだったし、昨日も遅くまで仕事をしてたみたいだから、ゆっくりできる朝は休ませてあげたい。

 瑞稀は動きを止め晴人の様子を伺い、熟睡しているのを確認し、ゆっくりと晴人の腕の中から抜け出そうとすると、

!!

 瑞稀を離さないように、またぎゅっと晴人は腕に力を入れる。

「瑞稀…?」

 よほど眠いのだろう。 

 睡魔と闘うように目を閉じたままだが、晴人は瑞稀の名前を呼ぶ。

「起こしてしまって、ごめんなさい。朝ご飯を作ろつろうと思って…。晴人さんはゆっくり眠っててください」

 そっとベッドから抜け出そうとするが、

「嫌だ」

 目を瞑りながらだが、晴人はさらに腕に力を入れた。

「『嫌だ』って…」

 駄々をこねる晴人のことが可愛くて、瑞稀はフフフと笑ってしまう。

 いつも紳士的で優しい晴人だが、寝ぼけている時は一瞬たりとも瑞稀と離れたくないようで、まるで別人のように瑞稀に甘えてくる。

 瑞稀にだけ見せる晴人の一面。
 だが、晴人自身は、寝ぼけながら瑞稀に甘えてるなんて記憶はなく、初めて瑞稀から甘えているという事実を聞いた時、顔が真っ赤になるほど照れていた。
 その姿が可愛くて、晴人が甘えてくれるのが嬉しくて笑みが溢れる。

「すぐに戻ってきます。だからゆっくり眠ってください」

 瑞稀はくるりと体ごと後を向くと、自分の胸の中で晴人を抱きしめる。
 そして晴人の髪を優しく撫でると、瑞稀を抱き締める晴人の力が少しずつ抜けていき、最終的には全身の力がすっかり抜け、深い眠りにつくのがわかった。


 毎日毎日が瑞稀にとっては初めてのことばかり。

 実は晴人は甘えたで、家にいるときはずっと瑞稀のそばにいたがったり、とことん瑞稀を甘やかそうともする。
 家事の分担を決めてはいるが、隙があれば晴人は全部1人でしようとすし、瑞稀の好きなメニューばかり作る。
 このままでは順調に瑞稀が太っていきそうだ。

 晴人ほど料理が上手でない瑞稀も、晴人が病院に行っている間、懸命に料理のレシピを見ながら勉強に励んでいた。

 晴人は研修医も無事終わり、春からは大きな総合病院の『バース科』で働いていて、瑞稀の仕事も順調。
 何もかもが充実し、幸せな生活。
 晴人との生活は瑞稀が想像していたよりも、何倍も何十倍も幸せな生活だ。

優しくて、頼り甲斐があって、かっこよくて…。
それでいて僕の前では甘えたで、可愛くて…。
愛しい人。

 晴人がぐっすりと眠りについたのを確認すると、瑞稀はそっとベッドから抜け出し、身支度を済ませ、キッチンに向かう。
 愛しい晴人のための、食事作りに。
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