【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

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8 / 202

翌日 ①

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あ…、朝だ。

 目を覚ますと、瑞稀は背中に温かな温もりを感じた。
 振り返ると、晴人が後ろからしっかりと瑞稀を抱きしめている。
 晴人との半年記念は、とても幸せな時間だった。
 後片付けは瑞稀が全部すると言ったが、晴人さんが「俺は瑞稀と一緒にしたい」と言ってくれ、晴人と二人でした後片付けも、とても楽しい時間となった。
 その後、ゆっくりコーヒーでも飲もうと言うことになり、晴人がコーヒーを淹れている間に…、どうやら瑞稀はソファー眠ってしまったみたいだったが、目覚めたのはベッドの中。
 きっと晴人が、ベッドまで運んでくれたんだろう。

 晴人はどこまでも優しくて、どこまでも魅力的だと瑞稀は思う。
 艶やかな黒髪に、同じく黒く長いまつ毛。
 シャープな輪郭に整った目鼻立ち。
 角張っていて、長い指先。
 今は眠っていて見えないが、黒い瞳の中にも優しさが滲みでている。
 ぐっすり眠る無防備な晴人の姿に、瑞稀の胸はドキンっと大きく跳ね、晴人の寝顔はいつ見ても綺麗だと、瑞稀は見惚れた。

 瑞稀は起こさないようと、ゆっくり晴人の胸の中から抜け出すと、正面からまじまじと晴人の顔を見つめる。
 頬に手を当てるとピクっと体を動かし起きそうになったので、瑞稀は慌てて手を引っ込めた。

起きちゃったかな…?

 しばらく寝顔を見続けるが、起きる気配はない。

昨日のディナー、美味しかったな。
1年記念は、僕が手料理ご馳走したいな。
今のままでは晴人さんみたいにすごい料理はできないから、これから毎日特訓!
それから晴人さんの好きなもの、こっそりリサーチもしないとね。

 瑞稀は半年後の『一年記念日』の計画をたてる。

付き合って1年経つ頃には、僕たち…恋人のキスとか…しちゃってるのかな?

 考えただけで、瑞稀の頬が赤くなる。
 今まで何度か、キスしそうになったことはある。
 だが、瑞稀はどうしても恥ずかしい気持ちが勝ってしまい、先には進めない。
 最近ようやく、晴人に抱きしめられたり、額にキスされても、体が強張らなくなってきたが、それでもスキンシップが多いと、どうしてもダメなのだ。

「僕だって、本当は晴人さんと…恋人のキスとか…、したいんですよ…」
 晴人が起きている時には、絶対に言えないが、晴人は今、眠っている。

こんな時にしか言えないなんて、情けなくなってくる…。

「晴人さんも、そう思ってくれてますか?」
 これも晴人が起きている時には、絶対に聞けないこと。

晴人さんとキス。どんな感じなんだろう。

 瑞稀は晴人の唇に人差し指を当てる。
 想像していたよりも、晴人の唇は柔らかかった。
 そしてもう一度、触れたくなった。

僕、どうしちゃったんだろう…。

 もう一度触れると、やはり柔らかい。

僕たち、いつかは恋人のキス…するんだよね。

 晴人は瑞稀が幼い時からの憧れの人。
 そんな人と恋人同士になったとは言え、憧れの人とキスするなんてしていいのか?と思ってしまう。

 またそっと頬に触れると、いつもより晴人を感じ、瑞稀の胸が高鳴る。

僕たち、いつかは恋人のキス…するんだよね。

 そう思う気持ちが、どんどん大きくなる。
 心臓の音が部屋中に響きわたっているのではないかと思うぐらい、大きく早く脈打つ。
 そしてとうとう、瑞稀は自分の気持ちを抑えられなくなってしまった。
 穏やかに眠る晴人の頬にそっと近づき……。

 キスをした。

 唇がほんの数秒、晴人の頬にあたっただけのキス。
 それなのに、瑞稀にはとてつもなく長い時間に感じられた。
 そして、瑞稀はキスをする前よりももっと、晴人のそばにいたいと思った。

絶対晴人さんの前では、恥ずかしすぎて言えない。
でもきちんと伝えておきたい。
言葉でちゃんと伝えておきたい。

 瑞稀は大きく息を吸い込み心を落ち着かせると、晴人の耳元に近づき、
「晴人さん、大好きです」
 そう囁くと、恥ずかしさのあまり瑞稀は顔中真っ赤にし、寝室を出た。
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