『手紙を書いて、君に送るよ』  

葉月

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触れたくて、触れていて ①

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ずっと見てられる。
病院で眠る先輩のそばにいるのは辛かったけど、
それから先輩は目覚め、
俺の記憶は無くしてしまったけど、
それでも、俺は先輩のそばにいれて…

「ん……」
神谷の瞼が微かに震え、そして目覚めた。
「おはようございます、先輩」
目覚めたばかりの神谷の顔を、晶は覗き込んだ。
すると、
「‼︎‼︎」
晶は神谷に抱きしめられた。
「先輩…?」
「…いなかったら、どうしようかと思った…」
「え?」
「起きた時松原がいなくて、もしまた松原の事忘れてたらって思うと…、怖かった…」
晶を抱きしめる神谷の力が入る。
「先輩のそばにいるっていったじゃないですか。それに、もしまた忘れられても、また思い出してくれるまで、しつこいぐらいいますよ」
抱きしめながら、晶が微笑む。

本当ですよ、先輩。
先輩が『いなくていい』って言ってもいます。
俺が先輩のそばから離れられなくなってますから……

「本当に…いてくれるか?」
晶を抱きしめる神谷の腕が…、背中が…、手が…

「先輩…、震えてる…」
神谷の震える背中を、晶が抱きしめる。
「……松原……」
「そばにいます。それでも心配だったら、こうして俺を抱きしめてください」

そうして俺も、先輩を感じていたいんだ。

「俺はずっと、こうして触れたかった。松原に触れたかった…。抱きしめて、松原を感じたかったんだ」
「……先輩……」

嬉しすぎて泣きそうだ。
俺もずっと触れたかった。
触れて欲しかったです…
先輩…

前は遠くから見てるだけで、よかった。
その次は先輩の視界に、俺が入り込めるだけ。
その次は先輩と話せて、
次は仲良くなれて、
次は先輩、後輩として一緒に出かけれて……
次は、次は…って、欲が出てくる。
先輩は薫の恋人。
そう思っても、先輩が思い出すまで、
俺、偽物でもいいから恋人でいたい。
特別になりたいんです。
先輩を独り占めしたいんです。
先輩、俺を独り占めしてくれませんか?
他のこと、何も考えられなくなるぐらい……
今だけ、
今だけ、
俺だけ、
見てくれませんか?
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