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映画のチケット
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「え…。さすがに、それは俺、してないと思う……」
「先輩食べてましたよ。俺のポテト、全部…奪い取るように」
「もしポテト食べたかったら、注文するする時、単品で買うと思うし…」
「ですよね。普通そうしますよね。俺も何回もそう言ってお願いしたんですけど、全然聞いてくれなかったじゃないですか‼︎」
「じゃあ、俺、本当に松原のポテト……」
「そうです‼︎奪って嬉しそうに食べてました‼︎」
「ごめん…」
しゅんとする神谷が可愛くて、晶は笑いそうになるのを、必死で堪える。
我慢だ。
笑ったら、先輩の性格上、またしゅんとするから。
俺と薫はバーガーセットだけ。
先輩はいつもバーガーのセットと、単品でもう一つバーガーを頼むんだ。
それで何故か薫、先輩、俺の順番でカウンターに座り食べてたよな。
速攻食べ終わる先輩は、毎回俺のポテトを『ちょーだい』って、笑顔で言うから…
あげてしまうんだ。
本当は俺、ポテト好きだから先に食べてもいいんだけど、先輩に『ポテトちょーだい』って言われたくて、毎回、俺がポテト手につけず置いていたの、知ってましたか?
「それで、今日は食べないんですか?おれのポテト」
「…食べて…いいのか?」
「どうぞ。俺もそのつもりでしたから」
晶は神谷に自分のポテトを差し出す。
「ありがとう」
嬉しそうに微笑むと、神谷はポテトを受け取り……
「一本お返し」
「‼︎」
驚く晶の口の中にポイッとポテトを放り込んだ。
あ、前と一緒だ。
先輩、前も俺がポテトをあげたら『一本お返し』って、ら俺の口の中にポテトを放り込んで…
覚えてた?
それとも癖?
「あ、それでさ、この前の映画のチケットなんだけど…」
「…」
映画のチケット。
その話が出ると、胸がチクリとする。
「明日土曜だろ?だからさ、明日一緒に観に行かないか?」
「え?」
「だから、映画…一緒にいかないか?…」
「…」
返事に困り晶が黙り込むと、
「デートだよ、デート。デートしようって言ってんの」
いつもより声を少し大きくして言う。
「え⁉︎待っ……‼︎声が大きいですって」
周りに聞こえてないか、キョロキョロ周囲を見渡しながら、晶が神谷の口を押さえる。
「ひふほ?ひははひほ?」
「はい?」
晶に口を押さえられているので、神谷はうまく喋れない。
「ははら……」
神谷がまた何か喋ろうとし、
「ひゃッ‼︎」
押さえている晶の掌を、ペロリと舐めた。
へ、変な声出た‼︎
晶はまた慌てて辺りを見回す。
大丈夫だ。
誰もこっちを見てない。
気が付かれてなかった…
ほっと胸をひと撫でする。
「先輩‼︎舐めないでくださいよ‼︎」
晶が小声で怒る。
「で、デートの待ち合わせ何時にする?」
神谷はまったく気にしていない。
むしろ少し嬉しそうで…
「…デート…、本当にするんですか?」
晶がおずおず聞くと、
「当たり前じゃん。俺たち付き合ってるんだし」
「そうですけど…」
「休みの日ぐらいは、松原独り占めしたいって思うだろう。普通」
「‼︎」
『今更何を言う』という風に神谷が晶を見るので、晶は赤面し顔を俯かせる。
なにそれ‼︎
急にそんなこと言われたら、
嬉しくて、恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。
「な、いいだろ?」
「…」
「いいって言ってくれないと、また掌舐めるけどいい?それとも首にしようかな……」
「‼︎‼︎ダメです‼︎絶対‼︎」
俯いていた晶が、ガバッと頭を上げる。
「じゃあ、何時待ち合わせ?」
「10時に…駅前で…」
顔を赤くしたまま晶が答えると、神谷は本当に嬉しそうに笑った。
「先輩食べてましたよ。俺のポテト、全部…奪い取るように」
「もしポテト食べたかったら、注文するする時、単品で買うと思うし…」
「ですよね。普通そうしますよね。俺も何回もそう言ってお願いしたんですけど、全然聞いてくれなかったじゃないですか‼︎」
「じゃあ、俺、本当に松原のポテト……」
「そうです‼︎奪って嬉しそうに食べてました‼︎」
「ごめん…」
しゅんとする神谷が可愛くて、晶は笑いそうになるのを、必死で堪える。
我慢だ。
笑ったら、先輩の性格上、またしゅんとするから。
俺と薫はバーガーセットだけ。
先輩はいつもバーガーのセットと、単品でもう一つバーガーを頼むんだ。
それで何故か薫、先輩、俺の順番でカウンターに座り食べてたよな。
速攻食べ終わる先輩は、毎回俺のポテトを『ちょーだい』って、笑顔で言うから…
あげてしまうんだ。
本当は俺、ポテト好きだから先に食べてもいいんだけど、先輩に『ポテトちょーだい』って言われたくて、毎回、俺がポテト手につけず置いていたの、知ってましたか?
「それで、今日は食べないんですか?おれのポテト」
「…食べて…いいのか?」
「どうぞ。俺もそのつもりでしたから」
晶は神谷に自分のポテトを差し出す。
「ありがとう」
嬉しそうに微笑むと、神谷はポテトを受け取り……
「一本お返し」
「‼︎」
驚く晶の口の中にポイッとポテトを放り込んだ。
あ、前と一緒だ。
先輩、前も俺がポテトをあげたら『一本お返し』って、ら俺の口の中にポテトを放り込んで…
覚えてた?
それとも癖?
「あ、それでさ、この前の映画のチケットなんだけど…」
「…」
映画のチケット。
その話が出ると、胸がチクリとする。
「明日土曜だろ?だからさ、明日一緒に観に行かないか?」
「え?」
「だから、映画…一緒にいかないか?…」
「…」
返事に困り晶が黙り込むと、
「デートだよ、デート。デートしようって言ってんの」
いつもより声を少し大きくして言う。
「え⁉︎待っ……‼︎声が大きいですって」
周りに聞こえてないか、キョロキョロ周囲を見渡しながら、晶が神谷の口を押さえる。
「ひふほ?ひははひほ?」
「はい?」
晶に口を押さえられているので、神谷はうまく喋れない。
「ははら……」
神谷がまた何か喋ろうとし、
「ひゃッ‼︎」
押さえている晶の掌を、ペロリと舐めた。
へ、変な声出た‼︎
晶はまた慌てて辺りを見回す。
大丈夫だ。
誰もこっちを見てない。
気が付かれてなかった…
ほっと胸をひと撫でする。
「先輩‼︎舐めないでくださいよ‼︎」
晶が小声で怒る。
「で、デートの待ち合わせ何時にする?」
神谷はまったく気にしていない。
むしろ少し嬉しそうで…
「…デート…、本当にするんですか?」
晶がおずおず聞くと、
「当たり前じゃん。俺たち付き合ってるんだし」
「そうですけど…」
「休みの日ぐらいは、松原独り占めしたいって思うだろう。普通」
「‼︎」
『今更何を言う』という風に神谷が晶を見るので、晶は赤面し顔を俯かせる。
なにそれ‼︎
急にそんなこと言われたら、
嬉しくて、恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。
「な、いいだろ?」
「…」
「いいって言ってくれないと、また掌舐めるけどいい?それとも首にしようかな……」
「‼︎‼︎ダメです‼︎絶対‼︎」
俯いていた晶が、ガバッと頭を上げる。
「じゃあ、何時待ち合わせ?」
「10時に…駅前で…」
顔を赤くしたまま晶が答えると、神谷は本当に嬉しそうに笑った。
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