『手紙を書いて、君に送るよ』  

葉月

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嘘 ②

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「松原くん、今日もありがとう」
神谷の母親が晶に礼を言うと、
「いえ、俺の方こそ忙しい時にお邪魔して、すみません」
晶は神谷の母に微笑んだ。
「本当に松原くんは、いい子ね」
「いえ、そんな……。では俺はここで失礼します」
晶は丁寧にお辞儀をし、神谷の母親と神谷に背を向けて歩き出した。



晶はあの後『こんなこと言える立場じゃないけれど…』と言ったあと、
神谷に一つお願いをした。

『俺と付き合ってるのは、誰にも言わないでください…』

神谷は『どうして?』と聞いたが、晶は答えなかった。

神谷先輩と付き合ってるって他の人に言ってしまったら、それを薫に聞かれているような気がして…
本当に付き合っていた薫は俺にさえ言ってなかったのに、嘘の恋人の俺は言えるはずがない。

本当は本当は、
なりたくて、なりたくて、なりたかった
神谷先輩の恋人。
俺は今、その恋人になった。
偽物の恋人に………
神谷先輩が薫に告白してる所を見てしまった時、
本当は俺は大失恋してたんだ。
だけど、全然苦しくなかった。
でも今は、
喉に
胸に
何かが詰まったような…
そんな感じがして…
辛いんだ……。


晶は日課になっている薫の墓参りに行こうと、電車に乗ろうとしたが、その日は電車には乗れなかった。


一体どんな顔して、薫に会いに行けばいいんだよ……………。
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