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7月5日 ⑥
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薫、なにやってんだよ。
もう夜だぞ。
夏なのに、外、真っ暗。
『生クリームってさ、暑いと溶けるの早いんだぞ』って俺、言ってしまったよな。
ごめん。
俺が悪かった。
謝るから、
目、開けてくれよ…
なぁ、薫………。
冷たい霊安室の、冷たいベットの上に寝かされている薫の顔は綺麗で、
まるで眠っているようだった。
だが、もう二度とこの目が開かれることはない…
だが、晶は信じられなかった。
晶がそっと薫の頬を触ると、冷たくて……
……………………。
言わなきゃよかった…
言わなきゃよかった。
あんな事。
あんな事言ったから、薫も一緒に行っていた神谷先輩も急いだんだ。
だから近道になる、あの交差点使ったんだ。
薫と神谷先輩は信号待ちをしていただけ。
なのにどうして…
トラックなんかが歩道に突っ込んでくるんだよ‼︎
薫はいいやつだ。
これから先、楽しいこと沢山やって、大好きな神谷先輩とも仲良くやっていくんだ。
たまに俺と遊んだりしてくれたりしたのかな?
なのに、なのに、それはもうできない。
晶はその場に力なくしゃがみ込んでしまった。
俺がいけないんだ。
誕生パーティーお願いしたから、
ケーキ取りに行くの急がせたから。
俺が1人、薫の家にいたから……
俺がいたら何かできたかもしれない。
薫や神谷先輩を守れたかもしれない。
晶の頭に『かもしれない』と、自分に対する怒りが込み上げてくる。
「ごめん、薫…。俺が悪かった…。だから、目、覚ましてくれよ…」
薫の死後はじめて晶の目から涙がこぼれ出し、それは嗚咽と共に止まることを知らず、
晶の泣き声は霊安室に響き渡った。
もう夜だぞ。
夏なのに、外、真っ暗。
『生クリームってさ、暑いと溶けるの早いんだぞ』って俺、言ってしまったよな。
ごめん。
俺が悪かった。
謝るから、
目、開けてくれよ…
なぁ、薫………。
冷たい霊安室の、冷たいベットの上に寝かされている薫の顔は綺麗で、
まるで眠っているようだった。
だが、もう二度とこの目が開かれることはない…
だが、晶は信じられなかった。
晶がそっと薫の頬を触ると、冷たくて……
……………………。
言わなきゃよかった…
言わなきゃよかった。
あんな事。
あんな事言ったから、薫も一緒に行っていた神谷先輩も急いだんだ。
だから近道になる、あの交差点使ったんだ。
薫と神谷先輩は信号待ちをしていただけ。
なのにどうして…
トラックなんかが歩道に突っ込んでくるんだよ‼︎
薫はいいやつだ。
これから先、楽しいこと沢山やって、大好きな神谷先輩とも仲良くやっていくんだ。
たまに俺と遊んだりしてくれたりしたのかな?
なのに、なのに、それはもうできない。
晶はその場に力なくしゃがみ込んでしまった。
俺がいけないんだ。
誕生パーティーお願いしたから、
ケーキ取りに行くの急がせたから。
俺が1人、薫の家にいたから……
俺がいたら何かできたかもしれない。
薫や神谷先輩を守れたかもしれない。
晶の頭に『かもしれない』と、自分に対する怒りが込み上げてくる。
「ごめん、薫…。俺が悪かった…。だから、目、覚ましてくれよ…」
薫の死後はじめて晶の目から涙がこぼれ出し、それは嗚咽と共に止まることを知らず、
晶の泣き声は霊安室に響き渡った。
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