『手紙を書いて、君に送るよ』  

葉月

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7月5日 ④

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遅いな………。

薫が出かけて3時間。
なんの連絡もなく、薫が帰ってこない。
心配した晶が何度か薫のスマホに連絡するが、折り返しのメールも電話もない。
いつもの薫からしたら、考えられないことだ。
今日、パーティー参加予定の神谷にも連絡してみるが、捕まらない。

おかしい…
何かあったんじゃ……

そんな時、

 ーーガチャッーー

玄関を開ける音がした。

「薫⁉︎」
晶が玄関に向かうと、
「晶くん。いらっしゃい」
仕事から帰ってきた薫の母が、いつものように晶に優しく微笑みかける。
「……。お邪魔…してます」
晶は帰ってきたのが薫でないことに、不安を募らせる。
「薫は?もうそろそろパーティー開始時間でしょ?」
「薫、出かけたまま帰ってきてなくて…」
「あら、ほんと?あの子、今日のパーティー凄く楽しみにしてたのよ」
薫の母は、薫の様子を思い出したのか『ふふ』と、思い出し笑いをした。
「薫、もう3時間も連絡がつかないんです」
晶が薫の母に訴えるが、
「そのうち帰ってくるわよ。それより、晶くん。アイスコーヒー飲む?」
そう言って薫の母ら冷蔵庫を開ける。

いや、そうじゃなくて……

晶が言いかけた時、机の上におきっぱなしになっている薫の母のスマホが鳴った。
「ママさん、電話鳴ってるよ」
キッチンで晶のためにアイスコーヒーを煎れている薫の母に、晶がスマホを手渡すと、
「知らない番号…。誰かしら?…はい、長谷部です」
話し出した。

「はい…はい…、はい、薫はうちの息子です…」

電話越しの人と話しを進めていくうちに、薫の母の顔色は青ざめ、震えていき……

ーーガタンッーー

とうとうスマホを床に落とし、その場にしゃがみ込んだ。

「ママさん‼︎大丈夫⁉︎」
「……」
晶が薫の母に駆け寄り語りかけるが、反応はない。
「ママさん‼︎ママさん‼︎」
今度は薫の母の肩を揺する。
が、
「……」
反応はない。

くそっ‼︎
薫に何があったんだ‼︎

晶は落とされたスマホを手に取り、
「お電話かわりました。もう一度説明していただいていいですか?」
出来るだけ落ち着いて話を聞こうと、努力した。
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