2 / 67
いつもの午後
しおりを挟む
「薫。神谷先輩から電話だよ」
「あ、ごめんごめん」
晶の部屋でゲームに夢中になっている薫に、晶が自分のスマホを手渡すと、薫は嬉しそうに受け取り神谷と話しだす。
晶のスマホに薫の淡い栗色の柔らかな髪がかかり、その髪を薫が耳にかける。
窓から差し込む光で、薫の白く滑らかな肌が美しく映し出され、長い睫毛がピンクに染まった頬に影を落としていた。
そんな薫の姿を晶は寂しげに見つめる。
薫、嬉しそう。
きっと電話の向こうの神谷先輩も、同じような顔してるんだろうな。
もう、以前のように、俺と薫と神谷先輩。
同じように3人では、過ごせないな…。
笑い合いながら話す薫は、幸せそうで楽しそうで、晶の胸はちくりと痛んだ。
薫が神谷先輩と知り合う前から、俺は神谷先輩が好きだ。
でもそれは、心の中だけに隠してた。
だって先輩は男だから。
俺はゲイで、男性しか好きになれない。
俺は今まで惚れっぽくて、一目惚れなんてザラだった。
でも神谷先輩は違った。
始まりは、俺の一目惚れ。
神谷先輩を目で追うだけで嬉しかった。
だけどある日、先輩と目が合い、先輩が俺の方を見て微笑んでくれた。
その時、雷に打たれた…。
そんな衝撃が、頭の先から爪先まで走っていったんだ。
そんなベタな……。
自分でもそう思った。
でも、それでは押さえがきかなくなるぐらい、先輩に溺れていった。
それから俺は必死になって、先輩との接点を探した。
先輩は高3。
俺は高1。
学年が違うし、先輩はサッカー部。
俺は帰宅部。
先輩は勉強もスポーツもできて、おまけにイケメンで優しい。
俺は勉強もスポーツもいまひとつ…。
決してイケメンではないし、上っ面だけ優しい、偽物の優しさだ。
これのどこに接点がある?
接点…、接点……。
そこで俺の頭の中に悪い閃きが浮かんだ。
『そうだ!!薫をサッカー部に入部させたらいいんだ!!』
家が隣同士、幼稚園からの幼馴染みの薫はスポーツ万能、サッカーだって中学までしてたけど、俺に合わせて高校からは薫も帰宅部になった。
そう思い立った瞬間から、俺は薫にサッカー部に入部するよう説得した。
薫も始めはどうして俺がそんな事を言い出したのか、不思議そうにしていたが、最終的には『晶の頼みだから仕方ないな~』と、承諾してくれた。
薫が入部してからは、俺の思った通りに事は進んでいった。
俺は毎日『薫の練習が終わるまで待っている』という名目で、サッカーをする先輩を見つめ、人懐っこい薫が先輩と仲良くなり、俺に先輩を紹介してくれると3人で一緒に遊んだりした。
俺はそれだけで幸せだった。
あの日までは……。
「あ、ごめんごめん」
晶の部屋でゲームに夢中になっている薫に、晶が自分のスマホを手渡すと、薫は嬉しそうに受け取り神谷と話しだす。
晶のスマホに薫の淡い栗色の柔らかな髪がかかり、その髪を薫が耳にかける。
窓から差し込む光で、薫の白く滑らかな肌が美しく映し出され、長い睫毛がピンクに染まった頬に影を落としていた。
そんな薫の姿を晶は寂しげに見つめる。
薫、嬉しそう。
きっと電話の向こうの神谷先輩も、同じような顔してるんだろうな。
もう、以前のように、俺と薫と神谷先輩。
同じように3人では、過ごせないな…。
笑い合いながら話す薫は、幸せそうで楽しそうで、晶の胸はちくりと痛んだ。
薫が神谷先輩と知り合う前から、俺は神谷先輩が好きだ。
でもそれは、心の中だけに隠してた。
だって先輩は男だから。
俺はゲイで、男性しか好きになれない。
俺は今まで惚れっぽくて、一目惚れなんてザラだった。
でも神谷先輩は違った。
始まりは、俺の一目惚れ。
神谷先輩を目で追うだけで嬉しかった。
だけどある日、先輩と目が合い、先輩が俺の方を見て微笑んでくれた。
その時、雷に打たれた…。
そんな衝撃が、頭の先から爪先まで走っていったんだ。
そんなベタな……。
自分でもそう思った。
でも、それでは押さえがきかなくなるぐらい、先輩に溺れていった。
それから俺は必死になって、先輩との接点を探した。
先輩は高3。
俺は高1。
学年が違うし、先輩はサッカー部。
俺は帰宅部。
先輩は勉強もスポーツもできて、おまけにイケメンで優しい。
俺は勉強もスポーツもいまひとつ…。
決してイケメンではないし、上っ面だけ優しい、偽物の優しさだ。
これのどこに接点がある?
接点…、接点……。
そこで俺の頭の中に悪い閃きが浮かんだ。
『そうだ!!薫をサッカー部に入部させたらいいんだ!!』
家が隣同士、幼稚園からの幼馴染みの薫はスポーツ万能、サッカーだって中学までしてたけど、俺に合わせて高校からは薫も帰宅部になった。
そう思い立った瞬間から、俺は薫にサッカー部に入部するよう説得した。
薫も始めはどうして俺がそんな事を言い出したのか、不思議そうにしていたが、最終的には『晶の頼みだから仕方ないな~』と、承諾してくれた。
薫が入部してからは、俺の思った通りに事は進んでいった。
俺は毎日『薫の練習が終わるまで待っている』という名目で、サッカーをする先輩を見つめ、人懐っこい薫が先輩と仲良くなり、俺に先輩を紹介してくれると3人で一緒に遊んだりした。
俺はそれだけで幸せだった。
あの日までは……。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】記憶のカケラ
樺純
BL
あらすじ
とある事故により記憶の一部を失ってしまったキイチ。キイチはその事故以来、海辺である男性の後ろ姿を追いかける夢を毎日見るようになり、その男性の顔が見えそうになるといつもその夢から覚めるため、その相手が誰なのか気になりはじめる。
そんなキイチはいつからか惹かれている幼なじみのタカラの家に転がり込み、居候生活を送っているがタカラと幼なじみという関係を壊すのが怖くて告白出来ずにいた。そんな時、毎日見る夢に出てくるあの後ろ姿を街中で見つける。キイチはその人と会えば何故、あの夢を毎日見るのかその理由が分かるかもしれないとその後ろ姿に夢中になるが、結果としてそのキイチのその行動がタカラの心を締め付け過去の傷痕を抉る事となる。
キイチが忘れてしまった記憶とは?
タカラの抱える過去の傷痕とは?
散らばった記憶のカケラが1つになった時…真実が明かされる。
キイチ(男)
中二の時に事故に遭い記憶の一部を失う。幼なじみであり片想いの相手であるタカラの家に居候している。同じ男であることや幼なじみという関係を壊すのが怖く、タカラに告白出来ずにいるがタカラには過保護で尽くしている。
タカラ(男)
過去の出来事が忘れられないままキイチを自分の家に居候させている。タカラの心には過去の出来事により出来てしまった傷痕があり、その傷痕を癒すことができないまま自分の想いに蓋をしキイチと暮らしている。
ノイル(男)
キイチとタカラの幼なじみ。幼なじみ、男女7人組の年長者として2人を落ち着いた目で見守っている。キイチの働くカフェのオーナーでもあり、良き助言者でもあり、ノイルの行動により2人に大きな変化が訪れるキッカケとなる。
ミズキ(男)
幼なじみ7人組の1人でもありタカラの親友でもある。タカラと同じ職場に勤めていて会社ではタカラの執事くんと呼ばれるほどタカラに甘いが、恋人であるヒノハが1番大切なのでここぞと言う時は恋人を優先する。
ユウリ(女)
幼なじみ7人組の1人。ノイルの経営するカフェで一緒に働いていてノイルの彼女。
ヒノハ(女)
幼なじみ7人組の1人。ミズキの彼女。ミズキのことが大好きで冗談半分でタカラにライバル心を抱いてるというネタで場を和ませる。
リヒト(男)
幼なじみ7人組の1人。冷静な目で幼なじみ達が恋人になっていく様子を見守ってきた。
謎の男性
街でキイチが見かけた毎日夢に出てくる後ろ姿にそっくりな男。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる