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第五弾

引っ越し祝い

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次の日、出社した真司は野宮にそっとお礼を言って合鍵を返すと、
「すぐに仲直りできてよかったな。お前はいい奴だから、絶対うまくいくって」
いつものように野宮が笑う。
「あ、それで、これ。遅くなったけど引っ越し祝い」
野宮はゴソゴソと紙袋を取り出し、真司に渡した。
「え⁉︎そんな…悪いよ」
「いいって。受けとれよ。でも、開ける時に条件がある」
野宮がにやりと笑い、周りに誰もいないことを確認する。
「絶対に家に帰って、彼女と一緒の時に開ける!これが絶対条件」
「なにそれ。変なものじゃないだろうな…」
真司は野宮に疑いの目を向ける。
「違うって。実用性の高いもの。二人で使えるものだから大丈夫」

実用性があって、二人で使えるもの…
蓮に隠さないといけないものではなさそうだ。
でも条件付きの引っ越し祝いなんて聞いたことない。

「じゃあ、そういうことだから、すぐにロッカーにしまっておけよ」
野宮は真司をロッカーの方へ押していった。


ロッカー室にいくと、そこには松野がいた。

「あ、先輩。おはようございます」
いつもの元気な挨拶に真司の笑みが溢れた。
「おはよ。今日は一段と元気だな」
「そうなんですよ。今日は先輩に渡したいものがあって…はい、これ」
松野は自分のロッカーから紙袋を取り出し手渡した。

この紙袋って…

「先輩気付きました?それ、有名な和菓子屋さんのお菓子です」
「でも、どうしてこれを俺に?」
「それはもちろん先輩の引っ越し祝いです」
松野はにっこりと笑う。
「本当に悩みましたよー。実用性のあるものにしようかと思ったんですけど、残るものだと蓮さんがイヤな気持ちになるかもしれないし、次は先輩の好きなコーヒーショップの豆にしようかと考えたんですが、もし俺からのプレゼントのせいで、蓮さんがそこのコーヒー飲めなくなったらって…ほら、匂いとな味ってその時の記憶を蘇らせやすいっていうじゃないですか…それで、次は先輩の好きな焼き菓子は?と思ったんですが、蓮さんは甘いのダメだし、先輩は苦いのダメ…」
「そんなに気を使ってもらって…」
「でも、ここで俺は閃いたんです‼︎先輩も蓮さんも喜んでもらえるもの!それは、せんべいです!これだと甘いのダメな蓮さんも、苦いのがダメな先輩でも食べられる‼︎凄くないですか⁉︎」
松野はこれでどうだ‼︎と言わんばかりのドヤ顔。
「そこまで考えてくれて…ありがとう。蓮といただくよ」
「喜んでもらえて良かったです。もし俺が引っ越した時はお願いしますよ…って、俺が引っ越す時は先輩と一緒に住むか…」
「‼︎」
「先輩驚きすぎ。冗談ですよ」
驚き目を見開いた真司の肩をポンポンと叩きながら、松野が仕事場へ向かった。

ありがとう。野宮、松野…
俺は本当に人に恵まれてる。
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