俺のスパダリはギャップがすごい 〜いつも爽やかスパダリが豹変すると… 〜

葉月

文字の大きさ
上 下
33 / 217
第四章

松野の気持ち ②

しおりを挟む
「で、松野。本当は何を相談したいんだ?」
半ば呆れながらも、なかなか話し出さない松野に真司が問いただす。
「先輩って…」
目は朦朧として、赤い顔をしながら松野が話し出そうとした時、真司の携帯の着信音が鳴った。
チラッと発信者をみると蓮からだ。

本当ならすぐにでもでたいが、今は松野の話を聞くのが先だ。
蓮には後で謝っておこう。

真司は電話を切った。
「…先輩、蓮さんからですか~?電話に出なくていいんですか?」
フラフラしながら、松野が真司の隣に座ってきた。
「また後で電話するからいいよ。今は松野の話が先。それで?」
一瞬、松野が嬉しそうな顔をして、真司の肩に頭をのせる。

「先輩って…俺のことどう思います?」
松野は真司を熱ぽい上目遣いで見つめる。
「‼︎」
思いもよらない質問に動揺し、真司は飲んでいたビールを吹き出しそうになった。
「どうって…よくできるイケメン」
「…だけですか?」
松野は少し悲しそうに目を伏せる。
「あとは…いつもよく笑ってて、元気で、可愛い後輩」
「それ以上は何もないんですか?」
松野は悲しそうに真司を見つめる。
「…俺諦めませんから!」
松野が真司の手を握る。
「‼︎なにを⁉︎」
手を握られた事に驚くのと、朝の一件について聞かれるかと思っていたのに、想定外の話をされ、真司は訳が分からなくなっていた。
その後も松野はビールを飲み進め…
アルコールに弱い松野は案の定というべきか、すぐに酔っ払い、もう一人では立てなくなっていた。

このまま一人で帰すのは心配だし…
仕方ない…
家まで送るか…

「松野、帰るぞ」

会計を済ませて、松野に肩を貸して部屋を出ようとした時、二度目の蓮からの着信があった。

『もしもし真司。今大丈夫?』
声をひそめた蓮の声。
「大丈夫。蓮、今仕事中なんじゃないか?」
『もう少しかかるかも…真司は今、外⁇』
電話ごしに聞こえる雑音で蓮は真司が外にいる事に気がついたようだった。
「松野っていう後輩…あ、朝会った奴な。そいつと飲みに行ってて、酔っ払ってるから今から送って行くとこ」
「そうなんだ…」
「また、家に着いたらメールする。蓮、あんまり無理するなよ」
「……真司も気をつけて、俺も連絡するよ」
真司は蓮の悲しそうな声がひっかかったが、ふらふらの松野を連れて帰る事が精一杯だった。


真司はタクシーを止めた。
「松野、家どこだ?」
「先輩の家ー」
松野は酔っ払い、ちゃんと答えてくれない。

仕方ない…

「松野、免許証見るからな」
財布から松野の免許証をとりだし、住所を運転士に伝えた。

家の前まで着くと、引きずるように松野をマンションの部屋の前まで連れていくと、鞄の中から鍵を取り出し中へ入った。

松野の部屋も真司同様、綺麗に整頓されいた。
「松野‼︎起きろ。着いたぞ‼︎」
真司が松野をベットに運び込んでから、起こそうと何度か声をかけると、やっと松野が起きた。
「おい、松野。俺帰るから、ちゃんと水飲んで鍵閉めてから寝るんだぞ」
途中で買ったペットボトルの水を松野に渡そうと真司が手を伸ばすと、その手を松野がグッと自分の方へ引き寄せ、真司を抱きしめる。
「‼︎」
真司は驚いて目を見開いた。
「なんでなんですか…」
「松野?」
真司は驚きで状況が把握できない。
「俺だって…好きなのに…」
「え?」
「俺だって好きなのに…先輩のこと…」
「‼︎」
松野の切なそうな声が真司の頭に響く。
「俺の方がずっと前から…」
真司を抱きしめる松野の手に力が入る。


まさか松野がそんな事を思っていたなんて…

「ごめん、松野…俺…」
真司が言いかけた時、
「俺諦めませんから」
松野は今まで見たことのないような真剣な眼差しで真司を見つめる。
「俺、先輩が俺のことを、好きになってくれる事なんてないって諦めてたんです。でも、これからは諦めません。絶対先輩に認められるようになります。だから、その時は今みたいじゃなく、ちゃんと告白させてください」
真司をきつく抱きしめていた腕を松野は離した。
「今日は迷惑をかけてしまって、すみませんでした。こんな事、もうしませんし、蓮さんとのことも誰にも言うつもりありません」
「…ごめん…」
真司はそう言うしか、できなかった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

敏感リーマンは大型ワンコをうちの子にしたい

おもちDX
BL
社畜のサラリーマン柊(ひいらぎ)はある日、ヘッドマッサージの勧誘にあう。怪しいマッサージかと疑いながらもついて行くと、待っていたのは――極上の癒し体験だった。柊は担当であるイケメンセラピスト夕里(ゆり)の技術に惚れ込むが、彼はもう店を辞めるという。柊はなんとか夕里を引き止めたいが、通ううちに自分の痴態を知ってしまった。ただのマッサージなのに敏感体質で喘ぐ柊に、夕里の様子がおかしくなってきて……? 敏感すぎるリーマンが、大型犬属性のセラピストを癒し、癒され、懐かれ、蕩かされるお話。 心に傷を抱えたセラピスト(27)×疲れてボロボロのサラリーマン(30) 現代物。年下攻め。ノンケ受け。 ※表紙のイラスト(攻め)はPicrewの「人間(男)メーカー(仮)」で作成しました。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...