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第四章
松野の気持ち ②
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「で、松野。本当は何を相談したいんだ?」
半ば呆れながらも、なかなか話し出さない松野に真司が問いただす。
「先輩って…」
目は朦朧として、赤い顔をしながら松野が話し出そうとした時、真司の携帯の着信音が鳴った。
チラッと発信者をみると蓮からだ。
本当ならすぐにでもでたいが、今は松野の話を聞くのが先だ。
蓮には後で謝っておこう。
真司は電話を切った。
「…先輩、蓮さんからですか~?電話に出なくていいんですか?」
フラフラしながら、松野が真司の隣に座ってきた。
「また後で電話するからいいよ。今は松野の話が先。それで?」
一瞬、松野が嬉しそうな顔をして、真司の肩に頭をのせる。
「先輩って…俺のことどう思います?」
松野は真司を熱ぽい上目遣いで見つめる。
「‼︎」
思いもよらない質問に動揺し、真司は飲んでいたビールを吹き出しそうになった。
「どうって…よくできるイケメン」
「…だけですか?」
松野は少し悲しそうに目を伏せる。
「あとは…いつもよく笑ってて、元気で、可愛い後輩」
「それ以上は何もないんですか?」
松野は悲しそうに真司を見つめる。
「…俺諦めませんから!」
松野が真司の手を握る。
「‼︎なにを⁉︎」
手を握られた事に驚くのと、朝の一件について聞かれるかと思っていたのに、想定外の話をされ、真司は訳が分からなくなっていた。
その後も松野はビールを飲み進め…
アルコールに弱い松野は案の定というべきか、すぐに酔っ払い、もう一人では立てなくなっていた。
このまま一人で帰すのは心配だし…
仕方ない…
家まで送るか…
「松野、帰るぞ」
会計を済ませて、松野に肩を貸して部屋を出ようとした時、二度目の蓮からの着信があった。
『もしもし真司。今大丈夫?』
声をひそめた蓮の声。
「大丈夫。蓮、今仕事中なんじゃないか?」
『もう少しかかるかも…真司は今、外⁇』
電話ごしに聞こえる雑音で蓮は真司が外にいる事に気がついたようだった。
「松野っていう後輩…あ、朝会った奴な。そいつと飲みに行ってて、酔っ払ってるから今から送って行くとこ」
「そうなんだ…」
「また、家に着いたらメールする。蓮、あんまり無理するなよ」
「……真司も気をつけて、俺も連絡するよ」
真司は蓮の悲しそうな声がひっかかったが、ふらふらの松野を連れて帰る事が精一杯だった。
真司はタクシーを止めた。
「松野、家どこだ?」
「先輩の家ー」
松野は酔っ払い、ちゃんと答えてくれない。
仕方ない…
「松野、免許証見るからな」
財布から松野の免許証をとりだし、住所を運転士に伝えた。
家の前まで着くと、引きずるように松野をマンションの部屋の前まで連れていくと、鞄の中から鍵を取り出し中へ入った。
松野の部屋も真司同様、綺麗に整頓されいた。
「松野‼︎起きろ。着いたぞ‼︎」
真司が松野をベットに運び込んでから、起こそうと何度か声をかけると、やっと松野が起きた。
「おい、松野。俺帰るから、ちゃんと水飲んで鍵閉めてから寝るんだぞ」
途中で買ったペットボトルの水を松野に渡そうと真司が手を伸ばすと、その手を松野がグッと自分の方へ引き寄せ、真司を抱きしめる。
「‼︎」
真司は驚いて目を見開いた。
「なんでなんですか…」
「松野?」
真司は驚きで状況が把握できない。
「俺だって…好きなのに…」
「え?」
「俺だって好きなのに…先輩のこと…」
「‼︎」
松野の切なそうな声が真司の頭に響く。
「俺の方がずっと前から…」
真司を抱きしめる松野の手に力が入る。
まさか松野がそんな事を思っていたなんて…
「ごめん、松野…俺…」
真司が言いかけた時、
「俺諦めませんから」
松野は今まで見たことのないような真剣な眼差しで真司を見つめる。
「俺、先輩が俺のことを、好きになってくれる事なんてないって諦めてたんです。でも、これからは諦めません。絶対先輩に認められるようになります。だから、その時は今みたいじゃなく、ちゃんと告白させてください」
真司をきつく抱きしめていた腕を松野は離した。
「今日は迷惑をかけてしまって、すみませんでした。こんな事、もうしませんし、蓮さんとのことも誰にも言うつもりありません」
「…ごめん…」
真司はそう言うしか、できなかった。
半ば呆れながらも、なかなか話し出さない松野に真司が問いただす。
「先輩って…」
目は朦朧として、赤い顔をしながら松野が話し出そうとした時、真司の携帯の着信音が鳴った。
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本当ならすぐにでもでたいが、今は松野の話を聞くのが先だ。
蓮には後で謝っておこう。
真司は電話を切った。
「…先輩、蓮さんからですか~?電話に出なくていいんですか?」
フラフラしながら、松野が真司の隣に座ってきた。
「また後で電話するからいいよ。今は松野の話が先。それで?」
一瞬、松野が嬉しそうな顔をして、真司の肩に頭をのせる。
「先輩って…俺のことどう思います?」
松野は真司を熱ぽい上目遣いで見つめる。
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思いもよらない質問に動揺し、真司は飲んでいたビールを吹き出しそうになった。
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このまま一人で帰すのは心配だし…
仕方ない…
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「松野、帰るぞ」
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「大丈夫。蓮、今仕事中なんじゃないか?」
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「そうなんだ…」
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「……真司も気をつけて、俺も連絡するよ」
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真司はタクシーを止めた。
「松野、家どこだ?」
「先輩の家ー」
松野は酔っ払い、ちゃんと答えてくれない。
仕方ない…
「松野、免許証見るからな」
財布から松野の免許証をとりだし、住所を運転士に伝えた。
家の前まで着くと、引きずるように松野をマンションの部屋の前まで連れていくと、鞄の中から鍵を取り出し中へ入った。
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「‼︎」
真司は驚いて目を見開いた。
「なんでなんですか…」
「松野?」
真司は驚きで状況が把握できない。
「俺だって…好きなのに…」
「え?」
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「‼︎」
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