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誤解 ③

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「優斗」
 後ろから健に抱きしめられる。
「話…、聞いてくれる?」
 背後から健の優しい声がした。
 優斗の目頭が熱くなって、涙が溢れた。
「……」
 
もう、健の優しい声なんて聞けないと思ってた…。

「何も言いたくなかったらそれでいい。俺と話たくなかったら、耳を塞いでくれていい。でも俺はただ、独り言、言いたいんだ…」
 苦しいそうな健の声が、優斗の胸を締め付ける。
「独り言、言ってもいい?」
 健が聞くと、優斗はコクンと小さく頷いた。
「有馬は大輔の恋人なんだ…」
「え!?!?」
 健の言っている意味がわからず、優斗は後を振り返り、優斗は瞬きを忘れるほど驚き、健の顔を見た。
「どういう…こと…?」
「有馬と大輔は大学の時から付き合ってて、大輔がピザ修行に行く時、一度別れた感じになってたんだよ。でも有馬が大輔のことがまだ好きだったみたいだから『よりを戻すのは優美ちゃん次第なんじゃないか?』って言ったんだ」
 優斗の様子を見ながら、健は優斗の頭を撫でる。
「!!じゃあ…じゃあイニシャル入りのマグカップは?」
「あれは姉さんと聡希さんのカップ」
「え!?!?」
 優斗はまた目を丸くした。
「実はこの部屋、元々は姉さんと聡希さんが同棲していた部屋で、俺が就職して部屋を探している間だけ、居候させててもらう予定だったんだけど、想像以上に住み心地が良くて、姉さん達が結婚して家を買ったから、マンションの名義を俺にして住み続けることになって…。引越しの時、姉さんたちが忘れてたのを、俺が片付けたんだけど、返す前にカップの存在自体忘れてたんだ」
「よし乃さん達のカップ?」
 優斗が首を傾げる。
「姉さんが『よし乃』で『Y』、義兄《にい》さんが『聡希《としき》』で『T』。な、『Y』と『T』」
「!!本当だ!!じゃあ、斗真くんと有馬さんが仲良しなのは?」
「大輔と俺は幼い頃からの馴染みだから、姉さんは大輔のことも弟みたいに可愛がってたんだ。有馬は大輔の彼女だから必然的に大輔と一緒に姉さん一家と仲良くなったってワケ」
 優斗の疑惑がどんどん解明されていく。
「ジュエリーショップに有馬さんと一緒に行ってたのは?」
「あれは…」
 健が口ごもる。
「やっぱり…」
 一気に優斗の顔が曇る。
「違うんだ!…本当は秘密にしたかったんだけど、誤解させたままなのはいけないから…」
「何か理由があるの?」
「あれ、優斗の誕生日プレゼントを選んでたんだ…」
 健が頭を掻いた。
「え?プレゼント?」
「そう、サプライズにしたくて。俺アクセサリー詳しくないから、詳しい有馬にアドバイスもらってたんだ。でも俺も勉強してデザイン探したり、優斗の指のサイズ、こっそり測ったりしてたんだよ」
「!!いつの間に!?」
「優斗が寝てる時に」
「知らなかった」
「2人で祝う初めての誕生日。特別にしたかったんだ」
 健を見上げる優斗の額にキスをする。
「じゃあ、有馬さんがしてた指輪は?」
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