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誤解 ②
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「優斗…なんのことを言ってるんだ?」
「だって健に抱きしめられるのは有馬さんで、俺じゃないんだ…」
言ってしまった…。
優斗の涙が頬を伝う。
「だってそうだろ?」
優斗はイニシャル入りのマグカップを持ってきた。
「このカップのイニシャルって、有馬優美さんの『Y』で『T』は健の『T』だろ?」
「え!?それどこで!?」
健は目を見開き、マグカップを凝視する。
「わざとじゃないけど、聞いちゃったんだ。有馬さんが元カレとよりを戻すかどうかは、有馬さん次第って健が言ってたことも、有馬さんとジュエリーショップに2人で行ってたことも、健が有馬さんに指輪を渡したことも…、知ってるんだ」
「!!ちょ、ちょっとまって!誤解だ!それは全部誤解だ!」
健が優斗に触れようと、手を伸ばそうとしたが、優斗はすっと体を逸らした。
「誤解な訳ないよ!!」
いつも穏やかな優斗が声を張り上げた。
「全部、全部知ってるんだ!有馬さんと名前を呼び合うほど仲良くて、マグカップだってひび割れを直してまで大切に使ってて、この部屋中、どこも有馬さんとの思い出が沢山あるんだ。有馬さんは健の実家にもよく行っていて、斗真くんとも仲良しなんだ。指輪だって好きなデザイン、2人で決めて、有馬さんの左手薬指に指輪をはめたのは健なんだ…」
「ちがう!全部誤解だ!」
健が優斗を抱きしめようとしたが、その手を優斗は振り払う。
「誤解なもんか!俺は有馬さんとやり直すまでの繋ぎで、有馬さんとよりをもどしたら、俺なんてもういらないんだ!」
「優斗!話を聞いてくれ!」
「今さら聞いて、どうなるんだよ!もう何も変わらないよ…」
俺は健と話がしたかっただけなんだ。
でも、口から出てくる言葉は、健を攻める言葉ばかり。
こんなこと言いたかった訳じゃないんだ。
最後ぐらい、最後ぐらい…笑ってさよならしようと思ってるのに…。
優斗は大きく息を吸い込む。
「健は何も悪くないのに、怒鳴ってしまってごめんね」
涙を堪えて、優斗は笑って見せた。
最後は笑って去っていくんだ。
くるりと優斗は健に背を向ける。
「有馬さんと幸せになって…」
大好きな健…、さよなら…。
幸せになってね。
悲しくて、悲しくて、悲しくて…。
声を出して泣き出しそうになった。
だが、声を殺して歩き出そうとした時、
「だって健に抱きしめられるのは有馬さんで、俺じゃないんだ…」
言ってしまった…。
優斗の涙が頬を伝う。
「だってそうだろ?」
優斗はイニシャル入りのマグカップを持ってきた。
「このカップのイニシャルって、有馬優美さんの『Y』で『T』は健の『T』だろ?」
「え!?それどこで!?」
健は目を見開き、マグカップを凝視する。
「わざとじゃないけど、聞いちゃったんだ。有馬さんが元カレとよりを戻すかどうかは、有馬さん次第って健が言ってたことも、有馬さんとジュエリーショップに2人で行ってたことも、健が有馬さんに指輪を渡したことも…、知ってるんだ」
「!!ちょ、ちょっとまって!誤解だ!それは全部誤解だ!」
健が優斗に触れようと、手を伸ばそうとしたが、優斗はすっと体を逸らした。
「誤解な訳ないよ!!」
いつも穏やかな優斗が声を張り上げた。
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「ちがう!全部誤解だ!」
健が優斗を抱きしめようとしたが、その手を優斗は振り払う。
「誤解なもんか!俺は有馬さんとやり直すまでの繋ぎで、有馬さんとよりをもどしたら、俺なんてもういらないんだ!」
「優斗!話を聞いてくれ!」
「今さら聞いて、どうなるんだよ!もう何も変わらないよ…」
俺は健と話がしたかっただけなんだ。
でも、口から出てくる言葉は、健を攻める言葉ばかり。
こんなこと言いたかった訳じゃないんだ。
最後ぐらい、最後ぐらい…笑ってさよならしようと思ってるのに…。
優斗は大きく息を吸い込む。
「健は何も悪くないのに、怒鳴ってしまってごめんね」
涙を堪えて、優斗は笑って見せた。
最後は笑って去っていくんだ。
くるりと優斗は健に背を向ける。
「有馬さんと幸せになって…」
大好きな健…、さよなら…。
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悲しくて、悲しくて、悲しくて…。
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だが、声を殺して歩き出そうとした時、
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