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指輪 ②
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駅まで走った優斗だったが、そのまま家には帰りたくなかった。
かと言ってどこに行けばいいかもわからない。
1人でいたい。でも1人でいたら、優美の左手で輝いていた指輪のことが、頭の中から離れない。
どうしよう…。
そんな時、優斗のスマホが鳴った。
恐る恐る発信者を見ると、相手は卓だった。
「もしもし…」
卓に気づかれないように、普段と変わりなく電話に出ようとしたが上手くいかず、たどたどしくなってしまった。
「優斗、今、駅?」
「え?」
今の姿を見られているのかもと、優斗はあたりを見回す。
「ロッカーの前にパスケース落としてたから、困ってるんじゃないかって思って。俺、今持ってるから、届けようか?」
何も知らない卓は、いつも通りの話し方。
よかった。
見られてた訳じゃなかったんだ…。
ほっとした。
ほっとしたら、緊張の糸が切れたように、目から涙がどんどん溢れてくる。
「もう電車に乗っちゃったから…明日…」
そこまで言った時、優斗がいる近くを救急車が通った。
「?今電車の中なんだよな」
「うん」
「じゃあどうして救急車のサイレンが聞こえるんだ?」
「!!それは…それは…それは…」
いい言い訳を考えたが、何も浮かんでこない。
「優斗、今どこ?」
「……」
「何があった?」
卓は優斗を怖がらせないように、優しい口調で言う。
「何も…ないよ…」
そう言ってみるが、涙を抑えた声が震えた。
「大丈夫。今から優斗に会いに行くから」
「でも、健に卓と会うって言ってない。言ってないから会えない…」
卓に会うって言ったら、健と話しないとダメになる。
今の状態では、健と話なんてできない…。
「チーフには、俺が後から謝っておくから大丈夫。だから優斗、今どこにいるか教えて」
優しい卓の声。
優斗は不安で爆発しそうな気持ちを、聞いてほしかった。
「駅の前に…いる」
「わかった。大丈夫すぐ行く。だから待ってて」
優斗が「うん」と答えると、卓は静かに電話を切った。
かと言ってどこに行けばいいかもわからない。
1人でいたい。でも1人でいたら、優美の左手で輝いていた指輪のことが、頭の中から離れない。
どうしよう…。
そんな時、優斗のスマホが鳴った。
恐る恐る発信者を見ると、相手は卓だった。
「もしもし…」
卓に気づかれないように、普段と変わりなく電話に出ようとしたが上手くいかず、たどたどしくなってしまった。
「優斗、今、駅?」
「え?」
今の姿を見られているのかもと、優斗はあたりを見回す。
「ロッカーの前にパスケース落としてたから、困ってるんじゃないかって思って。俺、今持ってるから、届けようか?」
何も知らない卓は、いつも通りの話し方。
よかった。
見られてた訳じゃなかったんだ…。
ほっとした。
ほっとしたら、緊張の糸が切れたように、目から涙がどんどん溢れてくる。
「もう電車に乗っちゃったから…明日…」
そこまで言った時、優斗がいる近くを救急車が通った。
「?今電車の中なんだよな」
「うん」
「じゃあどうして救急車のサイレンが聞こえるんだ?」
「!!それは…それは…それは…」
いい言い訳を考えたが、何も浮かんでこない。
「優斗、今どこ?」
「……」
「何があった?」
卓は優斗を怖がらせないように、優しい口調で言う。
「何も…ないよ…」
そう言ってみるが、涙を抑えた声が震えた。
「大丈夫。今から優斗に会いに行くから」
「でも、健に卓と会うって言ってない。言ってないから会えない…」
卓に会うって言ったら、健と話しないとダメになる。
今の状態では、健と話なんてできない…。
「チーフには、俺が後から謝っておくから大丈夫。だから優斗、今どこにいるか教えて」
優しい卓の声。
優斗は不安で爆発しそうな気持ちを、聞いてほしかった。
「駅の前に…いる」
「わかった。大丈夫すぐ行く。だから待ってて」
優斗が「うん」と答えると、卓は静かに電話を切った。
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