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健の実家 ⑨
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「あれ?健お兄ちゃんは?」
斗真は後ろを向いている間に健がいなくなっていて、あたりをキョロキョロする。
「パパは電話中」
優斗が健を指差すと、
「本当だ」
と健の方を見て、電話中の健と目が合うと手を振り合った。
「お電話、優美お姉ちゃん?」
『優美お姉ちゃん』って有馬さんのこと?
「優美お姉ちゃんのお名前って、有馬優美さん?」
「うん、そうだよ」
「今の電話は優美お姉ちゃんじゃない人。斗真くんは優美おねえと仲良し?」
「うん!仲良し!おばあちゃんのお家とか、公園でいっぱい遊んでくれるし、美味しいクッキー持ってきてくれるんだよ」
え…?
優斗の思考が一瞬止まる。
いっぱい遊んでくれる?
美味しいクッキー持ってきてくれる?
しかも健の実家に来て?
健の実家に来てたってことは、ご両親に紹介してるってことで…。
有馬さんは特別な人って…こと?
「今日は優美お姉ちゃん来ないの?」
斗真は優斗を見る。
「今日は…こないよ…」
「そっか…。優美お姉ちゃんとも遊びたかったな」
残念そうにする斗真を見て、優美と斗真が親しいことがわかり、優斗の胸がチクッとする。
「喧嘩しちゃったのかな?」
「喧嘩?してないと思うよ」
「じゃあ、指輪なくしちゃったのかな?」
「指輪?」
「うん。この前、パパとママとお出かけした時に、健お兄ちゃんと優美お姉ちゃんが、指輪のお店にいたの見たよ」
「え!?指輪のお店!?そこ、本当に指輪のお店だった?」
できるだけゆっくりと優しい口調で言うように心がけたが、できているかはわからない。
「うん、本当だよ。だってママに聞いたら『指輪のお店』って言ってたもん」
そんな………。
頭の中が真っ白になる。
指輪のお店…。
ジュエリーショップ。
どうして、そんなところに有馬さんと健が?
考えなくてもわかる。
男女2人が店にいると言うことは、ペアリングを選ぶ時。
やっぱり健と有馬さんは、ペアリングを選ぶほどの仲……。
有馬さん、斗真くんとだって仲が良さそうだし、
今日、健はご両親に俺のこと『恋人』って紹介してくれたけど、それは今だけで本当は有馬さんとよりを戻すつもり?
先ほどまであった幸せな気持ちが消え、胸がギュッと締め付けられる。
忘れようとしていたペアのマグカップも脳裏に浮かぶ。
健とのデートの時に田中と優美と健が話していたことが思い出される。
どの出来事も、2人が親密なのがわかる。
ーそんな…ー
と思ったり、
ーやっぱり…ー
と思ったり…。
俺1人、何も知らない…。
じわりと優斗の瞳に涙が浮かぶが、急いでその涙を拭った。
こんな姿、斗真くんには見せられない。
「パパ、お仕事の電話、長くなりそうだから、先にカレー食べちゃう?」
一生懸命笑顔を作り、斗真に向けた。
斗真は後ろを向いている間に健がいなくなっていて、あたりをキョロキョロする。
「パパは電話中」
優斗が健を指差すと、
「本当だ」
と健の方を見て、電話中の健と目が合うと手を振り合った。
「お電話、優美お姉ちゃん?」
『優美お姉ちゃん』って有馬さんのこと?
「優美お姉ちゃんのお名前って、有馬優美さん?」
「うん、そうだよ」
「今の電話は優美お姉ちゃんじゃない人。斗真くんは優美おねえと仲良し?」
「うん!仲良し!おばあちゃんのお家とか、公園でいっぱい遊んでくれるし、美味しいクッキー持ってきてくれるんだよ」
え…?
優斗の思考が一瞬止まる。
いっぱい遊んでくれる?
美味しいクッキー持ってきてくれる?
しかも健の実家に来て?
健の実家に来てたってことは、ご両親に紹介してるってことで…。
有馬さんは特別な人って…こと?
「今日は優美お姉ちゃん来ないの?」
斗真は優斗を見る。
「今日は…こないよ…」
「そっか…。優美お姉ちゃんとも遊びたかったな」
残念そうにする斗真を見て、優美と斗真が親しいことがわかり、優斗の胸がチクッとする。
「喧嘩しちゃったのかな?」
「喧嘩?してないと思うよ」
「じゃあ、指輪なくしちゃったのかな?」
「指輪?」
「うん。この前、パパとママとお出かけした時に、健お兄ちゃんと優美お姉ちゃんが、指輪のお店にいたの見たよ」
「え!?指輪のお店!?そこ、本当に指輪のお店だった?」
できるだけゆっくりと優しい口調で言うように心がけたが、できているかはわからない。
「うん、本当だよ。だってママに聞いたら『指輪のお店』って言ってたもん」
そんな………。
頭の中が真っ白になる。
指輪のお店…。
ジュエリーショップ。
どうして、そんなところに有馬さんと健が?
考えなくてもわかる。
男女2人が店にいると言うことは、ペアリングを選ぶ時。
やっぱり健と有馬さんは、ペアリングを選ぶほどの仲……。
有馬さん、斗真くんとだって仲が良さそうだし、
今日、健はご両親に俺のこと『恋人』って紹介してくれたけど、それは今だけで本当は有馬さんとよりを戻すつもり?
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ーそんな…ー
と思ったり、
ーやっぱり…ー
と思ったり…。
俺1人、何も知らない…。
じわりと優斗の瞳に涙が浮かぶが、急いでその涙を拭った。
こんな姿、斗真くんには見せられない。
「パパ、お仕事の電話、長くなりそうだから、先にカレー食べちゃう?」
一生懸命笑顔を作り、斗真に向けた。
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