上 下
239 / 269

健の実家 ⑧

しおりを挟む
「僕ね、自動車のゼリー作るの上手なんだよ」
 そう言いながら、斗真は車の型抜きに砂を詰める。
 砂場にやってきた3人は、砂がセットからスコップや動物や汽車、船や車などの型抜きなどの中から、思い思いのおもちゃを取り出す。
 健はスコップを使いながら、慣れた手つきで砂の山を作る。
 優斗は皿の上に型抜きで掌サイズの半円の砂を盛ると、そこに先ほど斗真が拾ってきた落ち葉を添える。
 どうやら3人は『おままごと』をすることになっていた。
 配役はこうだ。優斗がお母さん、健がお父さん、斗真がお兄ちゃんで弟もいるそうだが、弟は今は保育園に行っていて、家にはいない設定らしい。
「斗真くんは保育園に行かないの?」
 優斗が聞くと、
「僕のクラスはお休みなんだ」
 そう言いながら、次々と型抜きをしていく。
 が……。
 型抜きの中に入れる砂の量が足りず、全部形にならず、ちいさな砂の小山ができているだけだ。
 それでも斗真の目には全部綺麗にできているように映っているらしく、「これは車で、これはお船なんだよ」と色々説明してくれる。
 その姿が可愛くて、優斗は「そうなんだね」と相槌を打っていた。
「ママのお料理は終わったの?僕、お手伝いする!」
 斗真はお砂場セットから皿を取り出す。
「僕はカレー作るね」
 皿に砂を盛り、その上に砂をかける。
 パッと見た感じは、ただ単に皿の上に砂を盛っただけだが、斗真としてはご飯とルーらしい。
「パパは大盛り」
 やはり砂の上に砂をかけただけのカレーライス。でも、先ほど作ったカレーより量は多い。

斗真くんの目には、出来立てのカレーが見えてるのかな?

そう思っていると、優斗まで皿の上の砂がカレーに見えてくる。
「僕のはね、パパより、もっと大盛りなんだよ」
 皿からはみ出るほど砂を盛り付けた斗真は、砂場セットからスプーンを3つ取り出した。
「パパにご飯ができたよって言ってくる!」
 斗真が「パパ~」と呼べば、健は砂の山に穴を開ける手を止め「ん?」と返事をする。2人の姿はまるで本当の親子のよう。
「カレーできたよ」
 カレーを斗真が差し出すと、
「どこがライスで、どこがルーなのかわからない…斬新なカレーだな」
 そのカレーを見て健は楽しそうに笑い、優斗の隣に座る。
「パパのはね、大盛りなんだよ。でね、僕のはね、も~っと大盛りなんだよ」
「斗真は育ち盛りだもんな」
 健は差し出されたカレーとスプーンを受け取る。
「ママのはこれだよ」
 優斗も手渡されたカレーを受け取った時、健のスマホから着信音がした。
 健はポケットからスマホを取り出し、発信者を確認するが会話をすることなく電話を切り、またスマホをポケットに入れる。
「電話、出なくていいの?」
「ああ。コラボ企画のメンバーで『鈴木』ってやつなんだけど、あいつの話長いから話聞くのは有馬に任せておくよ」
 健は仕事の電話がかかってきたのに、さして気にしていない様子だ。
「俺、斗真くんと砂場ここにいるから、仕事関係ならかけ直した方が、いいんじゃない?」
「緊急なら、また向こうからかけ直してくるから…」
 と健が言っている間に、また着信が。
 相手はやはり鈴木。
 健は『はぁ~』とため息をつき、
「ごめん。ちょっと話してくる」
 電話に出つつ、優斗と斗真のそばを離れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

処理中です...