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健の実家 ③

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 ダイニングに通されると、
「あの…、実家の近くのお店のものなのですが、大好きでよく食べていて…。お口に合うか分かりませんが、もしよろしければ皆さんで食べて下さい」
 ネットで調べた通り、テーブルにつく前にて手土産を差し出す。
 密かに家で何度も練習した流れ。

これさえできれば、あとは言葉使いに気をつければ…。
 
 ちらっと健を見ると、健も嬉しそうに優斗を見ていた。
 
よかった…。

 ひとまず優斗は胸を撫で下ろした。
 礼儀作法もそうだが、自分の息子の恋人が同性だと知って、健の両親に嫌な顔をされるか、優斗は物凄く心配だったのだ。
 それに初対面の人には女の子に間違われる容姿は、コンプレックス。
 それにも触れないでくれて、本当に嬉しかった。

もしかして、健が先に話てくれていたのかな?

 優斗は健に大切にされている感じがして、嬉しかった。

「わざわざありがとう」
 母親が丁寧に受け取り、キッチンの中に入っていき、優斗のて手土産を開ける。
「まぁ、こんなにたくさん…。気を遣わせてしまってごめんなさいね」
 母親は申し訳なさそうだ。
「斗真くんがゼリー好きって聞いて…」
 優斗がそう答えると、
「まぁ、斗真のことまで気にかけてくてたなんて。本当にありがとう。どれもとても美味しそうだから、早速みんなでいただいてもいい?」
 健の母親が言うので、
「もちろんです!」
 優斗は『美味しそう』と言ってもらえたのが嬉しくて、大きな声で答えた。
 紅茶のいい香りがしてきて、緊張が少しずつほぐれていく。
 キッチンので紅茶を淹れてくれている健の母親は、とてもニコニコしているが、優斗の向かいに座る父親は無言で優斗を見ている。
………。
この場合、俺から話しかけた方がいいのかな?

 どうしていいかわからず、優斗がソワソワしていると、健の母親が紅茶と優斗が持ってきた手土産に母親が用意したケーキを添えて、テーブルに運ぶ。
「もう一也《かずや》さん。無言のままだと、優斗くん困っちゃうでしょ?」
「そうなんだが…」
 そう言って、一也はまた黙りこくってしまった。
「ごめんなさいね。一也さんこの人、優斗くんが来てくれるって、凄く楽しみにしてたんだけど、いざ優斗くんと会ったら緊張して、何も話せなくなってしまってるのよ」
「は、晴美《はるみ》さん、そんな事、言ってしまわなくても…」
 一也は顔を恥ずかし真っ赤にする。
「だって一也さん、緊張しすぎるとすぐに無口になって、怒ってると勘違いされやすいんですから。優斗くんに伝えていないと、誤解されちゃいますよ」
 晴美がクスクスと笑うと、一也は優斗の方を見て、
「今日は来てくれて、本当に嬉しいよ」
 不器用に微笑んだ。
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