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飲み会 ⑨
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「もしもし健?今、家に着いたよ。健はもう家に着いた?」
スマホを片手に、ふらつきながらも反対の手で靴を脱ぎ部屋に入ると、ソファーにどさっと座り込んだ。
「さっき着いたとこ。今日だいぶ酔ってたみたいだけど、もう大丈夫か?」
電話の向こうから聞こえてくる健の声が、心地よくて優斗は瞳を閉じた。
「俺、そんなに酔ってた?」
綾や卓にまで、そう思われていたかと思うと、少し恥ずかしい。
「ああ。1人で帰れるか心配したんだぞ」
「心配かけてごめんね。でも、卓が家まで送ってくれたから、大丈夫だよ」
「……え……?」
先ほどまで穏やかだった健の声に緊張が走る。
「今も…一緒?」
「ううん。さっき家の前で別れたから、今は1人。卓にはまた迷惑かけちゃったから、ちゃんとお礼しないと」
なににしよう…。
今度なにかリクエストないか聞いておかないと。
優斗がそんなことを考えていると、
「なぁ優斗、今からそっちに行っていいか…?」
健の切なそうな声がした。
「え?今から?こんなに遅いのに?」
急な健のお願いに、優斗が部屋の時計で時間を確認すると、もうすぐ日が変わりそうだ。
「こんな時間じゃ無理だよ。電車だって…」
「会いたいんだ」
優斗の声は、健の切なそうな声で遮られた。
「え…でも…」
優斗はもう一度、時計を見る。
もし健が今から家に来てくれるとなると、最低でも30分はかかる。
それから寝る用意をして、寝るまでに30分はかかる。
健は俺の家に泊まった時は、どんなに出勤時間が早くても一度自分の家に帰ってから出勤してるから、明日の朝も早い。
俺は大丈夫だけど、健の睡眠が少なくなってしまう。
俺だって健と一緒にいたいけど、これからずっと一緒に暮らせるんだ。今日無理する必要はない…。
「俺だって一緒にいたいけど、今日はもう遅いよ…」
「どうしても会いたいって言っても?」
「え…?」
優斗は戸惑った。どうして健が今日会うことに、ここまでこだわるのかがわからない。
「健…今日はどうしたの?なにかあった?」
「……」
「ねぇ健…?」
「……。ごめん、無理言った。そうだよな。今日はもう遅いから、やめておくよ。それじゃあ優斗、おやすみ」
そう早口で言うと、優斗が「おやすみ」と言う前に、健は電話を切った。
スマホを片手に、ふらつきながらも反対の手で靴を脱ぎ部屋に入ると、ソファーにどさっと座り込んだ。
「さっき着いたとこ。今日だいぶ酔ってたみたいだけど、もう大丈夫か?」
電話の向こうから聞こえてくる健の声が、心地よくて優斗は瞳を閉じた。
「俺、そんなに酔ってた?」
綾や卓にまで、そう思われていたかと思うと、少し恥ずかしい。
「ああ。1人で帰れるか心配したんだぞ」
「心配かけてごめんね。でも、卓が家まで送ってくれたから、大丈夫だよ」
「……え……?」
先ほどまで穏やかだった健の声に緊張が走る。
「今も…一緒?」
「ううん。さっき家の前で別れたから、今は1人。卓にはまた迷惑かけちゃったから、ちゃんとお礼しないと」
なににしよう…。
今度なにかリクエストないか聞いておかないと。
優斗がそんなことを考えていると、
「なぁ優斗、今からそっちに行っていいか…?」
健の切なそうな声がした。
「え?今から?こんなに遅いのに?」
急な健のお願いに、優斗が部屋の時計で時間を確認すると、もうすぐ日が変わりそうだ。
「こんな時間じゃ無理だよ。電車だって…」
「会いたいんだ」
優斗の声は、健の切なそうな声で遮られた。
「え…でも…」
優斗はもう一度、時計を見る。
もし健が今から家に来てくれるとなると、最低でも30分はかかる。
それから寝る用意をして、寝るまでに30分はかかる。
健は俺の家に泊まった時は、どんなに出勤時間が早くても一度自分の家に帰ってから出勤してるから、明日の朝も早い。
俺は大丈夫だけど、健の睡眠が少なくなってしまう。
俺だって健と一緒にいたいけど、これからずっと一緒に暮らせるんだ。今日無理する必要はない…。
「俺だって一緒にいたいけど、今日はもう遅いよ…」
「どうしても会いたいって言っても?」
「え…?」
優斗は戸惑った。どうして健が今日会うことに、ここまでこだわるのかがわからない。
「健…今日はどうしたの?なにかあった?」
「……」
「ねぇ健…?」
「……。ごめん、無理言った。そうだよな。今日はもう遅いから、やめておくよ。それじゃあ優斗、おやすみ」
そう早口で言うと、優斗が「おやすみ」と言う前に、健は電話を切った。
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