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「エリザベート!」

 トスカーナ様ではなくて、旧友のスミス様が、どうしてだか、私のことを追いかけた。

「スミス様、私のことを愛している以外であれば……私のことを追いかけない方がいいと思いますよ……」

 私は言った。私の味方だと思われると、スミス様立場も危うくなると思ったから。

「別に……特別君のことを愛しているわけではないが……いや、なんとなくトスカーナは、そのうち君のところに戻って来るんじゃないかって思ってさ……」

 そんなこと……あるわけないと思った。

「でもね……案外現実にはそういうことが起きるものさ。まあ、見ててみな……」

 スミス様のことを少しは見返した。幼い頃は悪戯好きで、トスカーナ様によく怒られていた。でも、時々私の窮地を救ってくれる……ような気がして。

「そうなんですかね?でもまあ、どっちでもいいです。ありがとうございました!」

 私は答えた。


「おいおい、帰る宛てはあるのかい?」

 スミス様は尋ねた。

「帰るって……私の家に帰るんですよ?」

「いや、それは無理だろうな……君の両親を疑うわけじゃないけれど……このまま君のことを匿ったら、君の家が貴族社会から破門されることは確実だ……」

 王女様に逆らったから、暴行を加えたから……だからと言って、両親が私を追い出すとは考えにくかった。

「そういう考えが出来るからこそ、君やトスカーナはこの世界にいるべきじゃないんだろうな……」


 スミス様はそう言った。きっと、打算的な貴族社会を皮肉っているのだった。

 
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