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15(トスカーナ視点)
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私はエリザベートを追いかけることが出来なかった。仕方がないことだった。本心では……エリザベートのことを追いかけたかったんだけど、それは出来なかった。さすがに王女様が見ているところでは出来なかった。
「ようやく邪魔な女が消えたわね……」
ひと騒動が終わって、私はそのまま王女様と少し話をした。
「あの治療を……またやってくれるかしら?私のことを虜にしてくれたあなたなら、きっと私のことを救ってくれる……」
王宮のロマンス、とでも言ったところか。私は再び王女様の身体に触れることとなった。
「ああ、やっぱり、あなたはいい男ね……まあ、私が最初は抵抗しても、あなたの方からどんどん迫ってきたのだけどね……」
私は返す言葉がなかった。その通りと言えばその通り……。
王女様が妙に私のことを気に入り、結果として私は王女様と婚約することになった。エリザベートへの未練が払拭されたわけではなかったが、仕方のないことだった。
王宮に入り、私は今までとは違う興奮を感じた。心の奥底から湧き上がる欲望……王女様を利用してこのまま伸し上がってもいいと思った。こういう形で婚約するなら、利用すればいいだけなんだ。
「あなたの目の色がどんどん変わっていく……欲望が人を堕落させていくとはこういうことなのね……」
王女様はいつでも笑っている。ひょっとして…最初から全部計画していたのか?私は心の寂しい人を救おうと考えた。その対象として、王女様はぴったりであった。それも……最初から王女様は全部分かっていたのだろうか。
いとも簡単に皇帝陛下に会うことだって出来る。メアリー様の婚約者探しはどうやら難渋していたらしい。
「彼女は見えないものが見えるとか、意味の分からないことを言う癖があるからね……このまま婚約者が見つからなかったら、王宮からひっそりと追放しようと思っていたんだよ……」
皇帝陛下……自分の子供であるのに、扱いは案外雑なんだと思った。
「トスカーナ殿?」
王女様は私をずっと呼んでいる。
「ああ、今行きますよ……」
「ああ、トスカーナ君……」
皇帝陛下は最後に声をかけた。
「別に彼女を幸せにしてやる必要はないんだよ。子供なんて作らなくてもいいから……」
深くは追及しなかった。なんだか闇が深いんだか……こういうこともあるんだなって思うに留めた。
「ようやく邪魔な女が消えたわね……」
ひと騒動が終わって、私はそのまま王女様と少し話をした。
「あの治療を……またやってくれるかしら?私のことを虜にしてくれたあなたなら、きっと私のことを救ってくれる……」
王宮のロマンス、とでも言ったところか。私は再び王女様の身体に触れることとなった。
「ああ、やっぱり、あなたはいい男ね……まあ、私が最初は抵抗しても、あなたの方からどんどん迫ってきたのだけどね……」
私は返す言葉がなかった。その通りと言えばその通り……。
王女様が妙に私のことを気に入り、結果として私は王女様と婚約することになった。エリザベートへの未練が払拭されたわけではなかったが、仕方のないことだった。
王宮に入り、私は今までとは違う興奮を感じた。心の奥底から湧き上がる欲望……王女様を利用してこのまま伸し上がってもいいと思った。こういう形で婚約するなら、利用すればいいだけなんだ。
「あなたの目の色がどんどん変わっていく……欲望が人を堕落させていくとはこういうことなのね……」
王女様はいつでも笑っている。ひょっとして…最初から全部計画していたのか?私は心の寂しい人を救おうと考えた。その対象として、王女様はぴったりであった。それも……最初から王女様は全部分かっていたのだろうか。
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「彼女は見えないものが見えるとか、意味の分からないことを言う癖があるからね……このまま婚約者が見つからなかったら、王宮からひっそりと追放しようと思っていたんだよ……」
皇帝陛下……自分の子供であるのに、扱いは案外雑なんだと思った。
「トスカーナ殿?」
王女様は私をずっと呼んでいる。
「ああ、今行きますよ……」
「ああ、トスカーナ君……」
皇帝陛下は最後に声をかけた。
「別に彼女を幸せにしてやる必要はないんだよ。子供なんて作らなくてもいいから……」
深くは追及しなかった。なんだか闇が深いんだか……こういうこともあるんだなって思うに留めた。
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