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 やがて、私は泥だらけの令嬢と噂されるようになった。騒ぎが大きくなった(当然のことだよね)ので、生徒会長である王女様も出しゃばって来る始末だった。

 ああ、このままだとダメだと思った。最悪、私は王女様を再度攻撃してしまう……今度は命を奪うことになるかもしれないと思った。

「あらっ、そちらのお嬢さんは、一体どうしたことでしょう?」

 王女様は汚れちまった私のところに駆け寄る。私は言葉を返さない。喧嘩が始まったら、勝てる自信が一切なかったから。

「どうしましたの?黙っているだけでは何も分かりませんわよっ?」

 それはそうだ……でもね、私はやっぱり何も答えなかった。

「いい加減にしなさいっ!」

 王女様がついにきれて、大声を上げる。はしたない……王女様ともあろうお方が大声で叫ぶだなんて、はしたないにもほどがあるってものだ。

 でもね、どういう風が流れているのか分からないが、結局のところ私が悪役令嬢ということになってしまうのだ。みんなが噂話を始める。

「ねえねえ、一体どうしたって言うのさ?」

「エリザベートとかいう公爵令嬢が王女様を怒らせているようだよっ」

「ひどいっ!王女様がかわいそうっ!」


 王女様は必ず級友を味方につける。悪いのはいつも、この私なのだ。

「皆さーん!」

 王女様は演説が上手いのだ。

「ここにいらっしゃる公爵令嬢のエリザベート殿がですねっ、酷いお姿になっているので、私は慈悲の心をもって話しかけたのですが……私のこの気持ちに答えることはなく、一向に無視し続けるのですよっ!」

 悲しそうな顔を浮かべて……私は分かっていた。本心ではきっと笑っているのだ。私を蹴落とすことに全神経を集中させているのだから、きっとね。
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