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 トスカーナ様はやっぱり、私のことを愛してくれている!

 そう思っていたのに、生徒会室にはなんだか変な空気が流れているようだ。トスカーナ様には申し訳ないんだけど、こっそりと覗いていたんだ。だって……トスカーナ様に変な虫がくっついてしまったら大問題だからね?

 どこかで聞いたことのある声だと思ったら……あの時私が痛めつけた王女様だった。あれだけトスカーナ様には近づかないようくぎを刺しておいたのに……また、トスカーナ様と楽しそうに話をしている。

 本当、どういう神経なのかしら?私には理解出来なかった。というか……もっと痛い目を合わせないといけないのか、なんて思った。

「もしもし、あなたは生徒会の役員ですか?」

 背後から聞いたことのない女の声が聞こえた。これもまた……トスカーナ様を狙う女なのか?私は特に返事をしなかった。

「黙っていては分かりませんよ?」

 声の大きさからして、女は私に近づいてきた。

「あのお……そういうあなたは何者なの?ひょっとして……私の邪魔をしに来たの?」

 私はこの時、殺気溢れていたに違いない。でもね、そんな殺気はすぐに飛んで行ってしまった。だって……私に対峙した女の方が怖かったのだから!!!

「ねえ、王女様に絡んでいる女子って……あなたのことかしら?」

「どうしてそれを……」

「言い訳は結構だから、ほら、正直にこちらを見て?見ないと……命の保証はないわよ?」

 女ははさみを持っている……単なる不審者だと思った。

「ああ、声を出しても無駄よ。私はね、少なくともこの学院内では何をしても、誰も咎めないから……だって、敬愛する第二王女メアリー様から許可を頂いているのだから……」

 また、面倒くさい女に捕まったと思った。本当に面倒くさすぎて、早く逃げ出したいと思った。でもね……この女は私と本気で戦おうとしていた。場合によっては、差し違える覚悟でね。

「ねえ、あんまり暴れない方がいいわ。大丈夫、下手な真似をしなければ、あなたを傷つけることはしない。でもね……私や王女様に危害を加える可能性があれば……その時は容赦なく排除するから……」

 人殺しの眼差しが、怯える少女の眼差しに変わっていく……でも、このままだと、トスカーナ様はやはり王女様に奪われてしまうのでは?なんて心配になって……。

「まあ、好きにしなさい……」

 女は最終攻撃を下すことなく、ひとまず私の元を去った。本当に何だったのか……。

 私は再びトスカーナ様と王女様のやり取りを見守ることにした。
























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