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「ランゲルハンス、どうして私が君をここに呼び出したのか、その理由はわかっているかな」

「全くわかりませんね。どうしてでしょうか」

「先ほど、抗議の連絡があってね。もちろん、どこからきたのかは言うまでもないと思うけれども」

「どうしてですか。私が何か悪い事でもしたのでしょうか」

「ランゲルハンス、君は本当に分かっていないのかね」

「わかっていたらこんな質問をしないと思いますが」

「まったく、仕方のない息子になってしまったもんだ。私はどこかで君の教育を間違えたのだろうか」

「それはどういう意味でしょうか」

ランゲルハンス様でしょうか。私は彼の姿を見ることができました。でも、彼らは私のことを見ていないようでした。見ていないと言うよりか、見えていないと言う方が正確だったでしょうか。

「皇帝陛下の問題ではないと思いますがね」

聞き覚えのある声でした。姿は見えませんでしたが、皇帝陛下、ランゲルハンス様、加えてもう1人いらっしゃるようでした。

「これはこれは、あなた様にまで心配をかけてしまうとは大変申し訳ございません」

「正直なところ、私個人としては大した問題ではないと思うんですよ。でもね、この世界を監督する身分としては、あなた方にこれ以上この世界を託すことに意味があるのか、判断しなければならない時期になったと言わざるを得ないかもしれません。分かりますか」

「その件につきましては、充分理解しているつもりでございます。しかしながら、ランゲルハンスにつきましては、この件については全く理解していないようで」

皇帝陛下は非常に恐縮されているようでした。

「まだ子供ですから、多少は仕方がないところでしょう。ですが、今回の1件につきましては大変問題だったと思うわけですよ」

「申し訳ございません」

「ランゲルハンス殿よりその言葉を聞きたいところですなあ」

「ところで、父上は誰とお話をされているんですか?」

ランゲルハンス様にもまるで見えていないようでした。

「おやおや、私の姿を確認することができないとは。やはり、あなたには皇帝の器がないようだ。そうですね?」

「あなた様のおっしゃる通りかもしれません。誠に申し訳ございません!」

「ですから、一体誰とお話をされているんですか?」

「ランゲルハンス、君には失望したよ。もういいから。少し頭を冷やしなさい」

ランゲルハンス様は当然納得することができませんでした。でも、皇帝陛下に言われてしまっては、従うしかなかったのです。

「ああ、やってらんねえや!!!!!」

ランゲルハンス様は吠えておりました。その横にはエリザベートともう一人若い女がおりました。

「うぜええええっ!!!!親父のやつ、何を考えているんだ???私に向かって皇帝の素質がないとか、ほんと、何言っちゃってるんだ???」

「ランゲルハンス様???あんまり、怒らないでください。怖いですわ」

「おいおい、エリザベート。今日はお前の相手をする気分にはならない。離れなさい」

「そんな~~~~~。どういうことですかああっ???」

「離れろと言っている!!!!!」

あのとき、私を殴ったときと似ておりました。ランゲルハンス様は頭に血が上ると、途端に危害を加え始めるのです。

「それは……あまりにもひどくありませんか???」

エリザベートは言いました。

「ひどいかどうかは、私が決める問題んだ。君が何を言ったところで、事実は変わらない。変わりようがないのだ。分かったか???分かったら、さっさと立ち去るんだ!!!!!」

これほどまで怒鳴られてしまったら、さすがのエリザベートも嫌になってしまいました。そして、ランゲルハンス様の部屋から出ていきました。でもね、彼の部屋にはもう一人の女が残っていました。でる間際、エリザベートはその女にも声をかけました。

「ねえ、あなたは出ていかないの???」

すると、女はこう答えました。

「私は……殴られても平気ですから、もう少しここに残ることにします……」

屈強な女……誰かは知りませんでした。おおよその想像だと、エリザベートすらも飽きられてしまったのでしょう。

あれ、でもそうすると、一体どれだけ月日が経ったと言うのでしょうか???

「エリザベート!!!!」

確かに、目の前にエリザベートがいるのです。私には見えます。でも、エリザベートは私のことを認識していないのです。

「あなた、私のことを敢えて無視しているの???」

問いかけを続けますが、そもそもこちらに視線を向けません。やはり、見えないのでしょうか。

ひょっとしたら、いま私が見ている光景はまだ夢の中???忠実に再現された夢の中なのでしょうか???




「ああ、あのクソ王子め!!!!!!」

エリザベートは彼女なりに悪態をつき始めました。

「私を差し置いて、あんな若い小娘と!!!!!」

ムキになる気持ちは分かりましたが、それは私が感じた屈辱と似ておりました。

「私という上物の女を捨てるだなんて!!!!!全く、何を考えているのよ!!!!!」

エリザベートは自分の部屋に引きこもって、ベルを鳴らしました。すると、王家に仕える若い執事が入ってきました。

「エリザベート様、お呼びでしょうか???」

「あら、待っていたわ。さあさあ、こっちにいらっしゃいな。ちょうどお茶が切れてしまって……」

そう言いながら、エリザベートは服をずらし、豊満な胸の谷間を顕わにしました。

「ちょうど喉が渇いたところだったから、お替りを頂けないかしら???」

「ああ、なるほど……。それは大変失礼いたしました……」

この執事、エリザベートの担当になるのは初めてなのでしょうか。確かに、いきなり彼女の相手をするとなると、さぞかし動揺してしまうことでしょう。それほど美しく妖艶だったわけですからね。

「ねえ、ちょっと傷ついているんだけど……この私を癒して頂けるかしら???」

エリザベートは首を傾げました。そして、若く反り立つ執事にその身体を寄せ始めました。

「あああっ、エリザベート様???一体何を???」

「何をって……先ほどから申し上げているでしょう???お茶のお替りが欲しいって……」

執事には理解できないようでした。こうやって、とっかえひっかえ男遊びに興じているのでしょうか???もはや、ランゲルハンス様の相手とされなくなった令嬢の悲しき末路……その悲しさを若い男で紛らわすということでしょうか。

「さあさあ、まだ夜は長いことだし……部屋に入ってね~~~~~」

そう言って、エリザベートは強引に執事を部屋に連れ込みました。その後どんな一夜になったのか……説明は不要でしょう。ああ、羨ましいやらなんとやら……。
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