最強の薬師、婚約破棄される〜王子様の命は私の懐の中〜

その25

ファンコニーと、彼が率いる男たちが、アンナの邸宅にやってきた。

「ファンコニー様！」

ファンコニーを見つけると、アンナは一目散に家から飛び出してきた。

「いったい、どこへいかれていたのですか?私、あなた様をずっと探していたのですよ？まあ、いいでしょう。こうして、あなた様を見つけることができたのですから。例の一件については、あと一週間くらいで決着がつくと思います。その後は……ファンコニー様。私と婚約してくださいますよね？」

アンナは、これで計画が全てうまくいったことを悟った。ファンコニーを味方につければ、全てが思い通りになるはずだった。

「へえっ……ホフマンの娘は、親の面そっくりだわあっ！」

男たちが罵った。

「ちょっと、あなたたちは何様なのよ！ファンコニー様の使いの者かしら？そんなわけないわよね！だとしたら、乞食のような格好をしているはずないし、何よりもそんな広い言葉遣いをするわけないわ！」

アンナは刀を抜いた。

「ファンコニー様？この者たちを切らしてください！」

ファンコニーは、

「よかろう」

と答えた。

「ただし、切れなかった時は、この者たちが貴様を切ることになる。それでよいな？」

「心得ております。それに……由緒正しきホフマン家の娘として、このまま生き恥を晒すつもりなどございません！」

ファンコニーは、アンナに宿る貴族としてのプライドを、この時初めて評価した。