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その13
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目を覚ますと、そこには見知らぬ女がいた。そして、自分の名前をずっと呼んでいた。
「ファンコニー様!お目覚めですか?」
よく見ると、見知らぬわけではなかった。命を救ってくれた恩人……アンナだった。
「ああ、今は何時だ?」
「もうとっくに夜ですよ。ファンコニー様、よっぽどお疲れでいらっしゃったのね?体調はいかがですか?」
「ああ、すっかり元気だ。だが……少し身体が重いような気がするな……。起き上がるのが大変というか……」
「それは大変です!すぐに薬師を呼んできますね!」
「薬師……?ああ、それなら適任者がいるんだ。おい、リンプルを呼んできてくれ……」
リンプル、とファンコニーが言ったので、アンナはドキッと動悸を感じた。
「あの……恐れながら申し上げますが、リンプルさんはここにはいませんよ」
「ええっ?どうしていないの?」
「リンプルさんは逮捕されたんですよ?ご存じありませんか?」
「逮捕だって!?」
ファンコニーは思わずベッドから跳ね上がった。
「いたたたっ……身体が言うことをきかない!」
「なるほど……どうやら、薬が効いたみたいですね……」
「ああっ?それはどういうことだ?」
アンナは横たわっているファンコニーに、ぴったりと抱き着いた。
「ちょっ…………君は何をしているんだい?」
「何って……見たら分かりませんか?その重くなった身体を癒して差し上げようと思いまして……」
「どういうつもりだ!!!」
ファンコニーはなんとかして、上に乗っかっているアンナをどけようと試みたが、やはり身体が自由に動かなかった。
「これも全て……あの女の仕組んだ罠なのですよ?こうして、だんだんとあなた様の自由を奪い、最終的には殺す算段だったのですよ?」
「そんなこと……あるわけないだろう!」
「あらあら……筋肉がピクピクと痙攣し始めましたよ?大丈夫ですか?早く薬師を呼んで手当したほうがよさそうですね……誰か!」
アンナは薬師を呼びだした。下の階から、どかどかと数人の大柄な薬師がやって来た。
「ファンコニー様の様子が変よ!早く、何か薬をお出しして!」
「承知いたしました!」
薬師たちは相談して、薬を生成し、ファンコニーに飲ませた。しばらくすると、身体の重さと妙な痙攣は収まっていった。
「あなたの前の薬師が仕込んだ毒を中和することができましたわ!どうですか?これで少しは身体が軽くなったでしょう?」
アンナにこう言われると、ファンコニーは、確かにそうだと思った。
「しかし……君たちは、どうしてすぐに毒だと気が付いたんだ?そして、その毒を見ただけで分析して、その拮抗薬を作ることができたんだ?」
ファンコニーの質問を受けて、アンナは再び動悸を感じた。そこへ薬師が助け舟を出した。
「これは一種の鎮静薬中毒でございます」
「鎮静薬中毒?なんだ、それは?」
「はい、私の見立てですと……あなた様は元々血圧が高めでした。それを下げるために……前の薬師はベータという成分を恐らく配合したのでしょう。ですが、このベータには強力な鎮静作用がございます。これが次第に発現してきたのでございましょう……」
ベータと聞いて、ファンコニーは次第に疑念が消えていった。確かに、リンプルが出した薬には、ベータという成分を含んでいると聞いた。
「私たちはベータに拮抗する薬を用いました。これから、次第に効果が現れてきます。そして……あなた様の病はたちまち回復するでしょう!」
リンプルは治療を誤ったのか?診断を誤ったのか?
ファンコニーの脳内には、リンプルに対する疑念が次々と生まれ始めた。
「ファンコニー様!お目覚めですか?」
よく見ると、見知らぬわけではなかった。命を救ってくれた恩人……アンナだった。
「ああ、今は何時だ?」
「もうとっくに夜ですよ。ファンコニー様、よっぽどお疲れでいらっしゃったのね?体調はいかがですか?」
「ああ、すっかり元気だ。だが……少し身体が重いような気がするな……。起き上がるのが大変というか……」
「それは大変です!すぐに薬師を呼んできますね!」
「薬師……?ああ、それなら適任者がいるんだ。おい、リンプルを呼んできてくれ……」
リンプル、とファンコニーが言ったので、アンナはドキッと動悸を感じた。
「あの……恐れながら申し上げますが、リンプルさんはここにはいませんよ」
「ええっ?どうしていないの?」
「リンプルさんは逮捕されたんですよ?ご存じありませんか?」
「逮捕だって!?」
ファンコニーは思わずベッドから跳ね上がった。
「いたたたっ……身体が言うことをきかない!」
「なるほど……どうやら、薬が効いたみたいですね……」
「ああっ?それはどういうことだ?」
アンナは横たわっているファンコニーに、ぴったりと抱き着いた。
「ちょっ…………君は何をしているんだい?」
「何って……見たら分かりませんか?その重くなった身体を癒して差し上げようと思いまして……」
「どういうつもりだ!!!」
ファンコニーはなんとかして、上に乗っかっているアンナをどけようと試みたが、やはり身体が自由に動かなかった。
「これも全て……あの女の仕組んだ罠なのですよ?こうして、だんだんとあなた様の自由を奪い、最終的には殺す算段だったのですよ?」
「そんなこと……あるわけないだろう!」
「あらあら……筋肉がピクピクと痙攣し始めましたよ?大丈夫ですか?早く薬師を呼んで手当したほうがよさそうですね……誰か!」
アンナは薬師を呼びだした。下の階から、どかどかと数人の大柄な薬師がやって来た。
「ファンコニー様の様子が変よ!早く、何か薬をお出しして!」
「承知いたしました!」
薬師たちは相談して、薬を生成し、ファンコニーに飲ませた。しばらくすると、身体の重さと妙な痙攣は収まっていった。
「あなたの前の薬師が仕込んだ毒を中和することができましたわ!どうですか?これで少しは身体が軽くなったでしょう?」
アンナにこう言われると、ファンコニーは、確かにそうだと思った。
「しかし……君たちは、どうしてすぐに毒だと気が付いたんだ?そして、その毒を見ただけで分析して、その拮抗薬を作ることができたんだ?」
ファンコニーの質問を受けて、アンナは再び動悸を感じた。そこへ薬師が助け舟を出した。
「これは一種の鎮静薬中毒でございます」
「鎮静薬中毒?なんだ、それは?」
「はい、私の見立てですと……あなた様は元々血圧が高めでした。それを下げるために……前の薬師はベータという成分を恐らく配合したのでしょう。ですが、このベータには強力な鎮静作用がございます。これが次第に発現してきたのでございましょう……」
ベータと聞いて、ファンコニーは次第に疑念が消えていった。確かに、リンプルが出した薬には、ベータという成分を含んでいると聞いた。
「私たちはベータに拮抗する薬を用いました。これから、次第に効果が現れてきます。そして……あなた様の病はたちまち回復するでしょう!」
リンプルは治療を誤ったのか?診断を誤ったのか?
ファンコニーの脳内には、リンプルに対する疑念が次々と生まれ始めた。
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