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その5
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ファンコニーが一過性に意識を失い、道端で倒れていたという事実が明るみになると、今度はその原因究明が問題になった。原因究明の指揮をとったのは、皇帝直属の情報機関であり、そのトップに君臨していたのが、ホフマン公爵であった。
ホフマン公爵は、リンプルの父であるボアジエ公爵の同級生であり、二人は元々仲が良かった。しかしながら、二人は別々の道を進むことになる。ホフマン公爵家は代々軍人の家系であった。先代やそのまた先代の公爵たちは、戦争において数々の勲功をあげた。現代になって、戦争は一度も起きていない。平和社会が実現すると、ホフマン公爵の役割は軍事ではなく、諜報活動に変化した。
ホフマン公爵は、疑わしき民を牢獄に入れ、処罰することを繰り返した。国体保持という観点からは評価できたかもしれないが、当然、反感を買うこともあった。ことさら、ボアジエ公爵のような博愛主義者に言わせれば、ホフマン公爵の行いは大いに問題があった。
いっぽう、貧しき民をも分け隔てなく救済するボアジエ公爵のことを、ホフマン公爵は良く思っていなかった。彼らが一致団結して軍隊となった場合、国体の保持は場合によっては困難になると考えた。
「貧しき者を救う必要はない。社会の荷物になるだけだ」
ホフマン公爵はこう苦言を呈した。
「私は薬師だから、君が何と言おうと、私のやり方を貫くまでだ」
ボアジエ公爵は、一歩も引かなかった。
さて、今回の一件は、ホフマン公爵にとって、非常に優勢だった。つまり、ファンコニーが意識を失った原因を、ボアジエ公爵の娘であるリンプルのせいだということにすれば、この度持ち上がった二人の婚約を破談させることができ、さらには、国体の窮地を救った英雄として称えられ、娘のアンナがファンコニーと婚約することになれば、ホフマン公爵家がより一層繁栄すると思った。
「アンナよ。ファンコニー様と婚約したくはないか?」
「ファンコニー様……王子様と婚約してどうするんですか?」
「そうすれば、お前の望みは全て叶うんだぞ?お前は皇帝の母になることができる。そして……リンプル君と言ったかな、ボアジエのろくでなし娘を抹殺することだってできるんだ……」
「リンプル……あいつを抹殺することができるんですか!」
アンナは喜んだ。リンプルのせいで、と言うのはあくまでも彼女の妄想だった。しかしながら、今までの学園生活を楽しむことができなかったのは、リンプルが隣にいたからだと自分に言い聞かせていた。
「リンプルさえいなければ……私は成績一番で、スポーツも一番で……美しさも一番で!ああっ、全部あいつに持って行かれたんです!好きな人も出来たのに、みんなリンプルに告白して!私の青春なんて、全部あいつにぶっ壊されたんです!!!」
「ならば、復讐したいとは思わないかい?今が絶好のチャンスなんだぞ……」
「お父様……私、やります」
「そうか、よく言ったな……」
親子の意見が一致した。ここから、ファンコニーの一件が全て、リンプルによるものだというストーリーが作られることになった。
ホフマン公爵は、リンプルの父であるボアジエ公爵の同級生であり、二人は元々仲が良かった。しかしながら、二人は別々の道を進むことになる。ホフマン公爵家は代々軍人の家系であった。先代やそのまた先代の公爵たちは、戦争において数々の勲功をあげた。現代になって、戦争は一度も起きていない。平和社会が実現すると、ホフマン公爵の役割は軍事ではなく、諜報活動に変化した。
ホフマン公爵は、疑わしき民を牢獄に入れ、処罰することを繰り返した。国体保持という観点からは評価できたかもしれないが、当然、反感を買うこともあった。ことさら、ボアジエ公爵のような博愛主義者に言わせれば、ホフマン公爵の行いは大いに問題があった。
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「アンナよ。ファンコニー様と婚約したくはないか?」
「ファンコニー様……王子様と婚約してどうするんですか?」
「そうすれば、お前の望みは全て叶うんだぞ?お前は皇帝の母になることができる。そして……リンプル君と言ったかな、ボアジエのろくでなし娘を抹殺することだってできるんだ……」
「リンプル……あいつを抹殺することができるんですか!」
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親子の意見が一致した。ここから、ファンコニーの一件が全て、リンプルによるものだというストーリーが作られることになった。
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