婚約破棄された令嬢の再婚相手はわけありの隣国王子~愛が重たいけれど一生懸命がんばります!~

岡暁舟

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その3

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(…………え?)

一瞬、何の事だかさっぱり分からなかったが、すぐに思い至った。そういえば、私はいつもコロンをつけている。今日もつけていたはずだ。それならば、先程まで一緒にいたレオンハルト様と同じような香りがしてもおかしくはない。それにしても、まさかそんな事でバレるとは思わなかった。

「何の話でしょう?」

私は精一杯惚けようとした。というか、フリッツ王子はレオンハルト様の匂いを知っているのか……それが正直最大の疑問ではあった。

「惚けんじゃねぇ!お前が私の知っているレイチェルじゃない事くらい分かってんだ!」

フリッツ王子の知っている私……少しの時間しか、しかも一度しか会ったことのない人間に対して言うセリフだとはとても思えなかった。そんでもって、私も少しムキになってしまった。

「何を言っているんだか、さっぱり解りませんわ。私はあなた様の知っているレイチェルでございますよ」

「うるせぇ!いい加減にしろ!!」

怒鳴られてビクリとした。今までに聞いた事がないくらい激しい声音だ。

そして同時に、自分がどうやら、少しばかりバカだったのではないか、と考えるようになった。私は自分の事ばかり考えて、相手の事を全然考えていなかったのだ。だから気付かなかった。いや、分かっているつもりでいて、実際は何も理解していなかったのだろう。そもそも彼がここまで怒っている理由は一つしかないではないか。私が浮気をしていると思ったのだ。だから怒ったのだ。でも……だとするとどうして???

「私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない私の知っているレイチェルじゃない………………」

ブツブツと静かに呟くフリッツ王子に、ある意味恐怖感も抱いた。ああ、こういう時はとりあえず謝罪すればいいと思った。自分が全部悪いことにして誤ってしまえば、とりあえずは解決すると思った。変なプライドはとりあえず捨てて……。

「ごめんなさい」

「ああああっ?なんか言ったか???」

「私が悪かったです。確かにあなた以外の男性と親しくしていました。でも、決して浮気などではありません。そもそも、私は誰とも婚約していないのですから、浮気なわけないでしょう????」

「……本当なのか?????あの……何と言ったか、ああそうだ、レオンハルトと婚約するって話はどうしたんだ?????」

どうして、私とレオンハルト様のことを知っているのか……などなどツッコミどころまんさいだったが、もうめんどくさかったので、一々聞こうとは思わなかった。

「ああ、その件でございましたら、もう既に終わっておりますよ。というか、私に言わせれば、そもそも最初から始まっていないようなものなのですが。全てはレオンハルト様の勘違いと言うことでしょう」

「本当なのか????私は君のことを信じていいのか???」

「はい」

「嘘ついたら……殺してもいいか?????」

なんというダイレクトな表現!!!!

「どうぞ」

大胆にもそう答えてみた。

「……なら信じてやる」

「ありがとうございます……」

とりあえず誤解を解く事が出来、ホッと胸を撫で下ろす。正直まだ完全に安心できた訳ではないけれど、それでもひとまず最悪の事態だけは避けられたようだ。これで落ち着いて話が出来るようになった。

私は改めて彼に向き直る。

「それで、なぜフリッツ殿下は怒っておられたのでしょうか?私が原因だと仰いましたが」

「……俺がどれだけ我慢してたか分かるか?」

「ええええっ?それはどういう意味ですか????」

余裕が少しできたので、今度は私のほうから質問してみた。

「俺はなぁ、ずっと前からお前が好きだったんだよ!」

あまりにも意外な告白に……再び驚くことになったのだった……。
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