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「それでは……今を持ちまして、私はこの場を去ってもよろしゅうございますね???」
ポワソン様があまりにも優柔不断でムカついたので、これ以上この空間にいたくありませんでした。
「まあ、もう少し待ってくれないか???」
葛藤と戦うポワソン様……でも、本当に関係なかったのですよ。私には。
「何を待つ必要があるんですか!!!」
私は思わず声を荒げてしまいました。こんな声を出すことがなかったので、ポワソン様はびっくりしているようでした。
「いいや、私の表現が悪かった。婚約破棄はその……まだ正式に決まったわけではなくて……」
「あら、決まっていないのですか???だって、双方が納得しているんですから、これ以上議論する必要はないのでは???」
「まあ、普通はそうなんだが……」
ポワソン様は明らかに慌てておりました。彼の今の心持ちを読み取ろうとも考えましたが、止めておきました。だって、他人の考えていることをスキャンするの、結構疲れるんですよ。自分の利益になることだったら、多少の疲労を覚悟してでもやりますよ。でもね、いまさらこんな男の考えが分かったところで、どうにもなりませんからね。
「それでは……ご苦労様でした……」
「いや、だから少し待ってくれと……」
ほんの一瞬だけ、彼の考えていることをキャッチしました。そこには、他の女の姿がちらほらと浮かんでおりました。なるほど、今日の交尾要員は公爵令嬢のステイシーとキャサリンだと分かりました。彼女たちは既にそれぞれの部屋で待機しています。でも、あまりにも私とポワソン様の話が長いものだから、少しイライラして、この部屋の前までやって来たようでした。
そして……大変な話を聞いてしまったと。私とポワソン様の婚約話がなくなってしまう……これは彼女たちにとっては大きなチャンスでした。次の婚約者に選ばれれば……それは家にとって大変な名誉ですからね。つまり、もちろん今日の二人に限らず、彼を取り巻く令嬢たちに同じ権利があるわけです。最初に身籠るのは一体誰なのか……それでおおよその勝負は決着することでしょう。
「ポワソン様!!!」
私は思わず言ってしまいました。
「いま、あなた様が考えていることを当ててみましょうか???」
私はイジワルな女なのでしょうか???自分ではいまいち分かりません。でもね、仕方ないと思うんですよ。だって、みんなが私どもを敵に回したがるから。だとしたら、もはや誰も信じることなんてできないじゃないですか。
「私と婚約破棄して今晩はフリー……外に控えている二人の令嬢……さあ、どちらから最初に抱こうか……違いますか???」
こんなことを言いだすものですから、ポワソン様はますます驚いてしまいました。まあ、無理もありません。当然のことだと思います。
「どうして……そんなことが分かるんだ???」
「まあ、なんとなく漠然とですね」
「はあっ……そうなのか……」
(やばいやばい……このことが皇帝陛下にばれてしまったら、それこそ私はどんなふうになってしまうのだろうか???ああ、非常にまずいことになってしまうな……)
「いまさら慌てる必要はないと思いますよ???」
「どうして……」
「もうこんな議論はお終いにしましょう。さあ、とっととそこの二人と夜をともにすればいいじゃないですか。誰も文句は言いませんよ」
私がこう言うと、例の二人は部屋の中に入ってきて、一瞬私の方を見ました。そして、すぐさまポワソン様の元に駆けより、
「王子様!!!」
と猫のように甘く囁くのでした。
「ねえ、今晩は私たちの相手をして下さるのでしょう???」
「ああっ、あああああっ…………」
これが本意……でも、この世界は少しずつまずい方向に動き出そうとしておりました。当然、誰も気が付きませんでしたけれども。
ポワソン様があまりにも優柔不断でムカついたので、これ以上この空間にいたくありませんでした。
「まあ、もう少し待ってくれないか???」
葛藤と戦うポワソン様……でも、本当に関係なかったのですよ。私には。
「何を待つ必要があるんですか!!!」
私は思わず声を荒げてしまいました。こんな声を出すことがなかったので、ポワソン様はびっくりしているようでした。
「いいや、私の表現が悪かった。婚約破棄はその……まだ正式に決まったわけではなくて……」
「あら、決まっていないのですか???だって、双方が納得しているんですから、これ以上議論する必要はないのでは???」
「まあ、普通はそうなんだが……」
ポワソン様は明らかに慌てておりました。彼の今の心持ちを読み取ろうとも考えましたが、止めておきました。だって、他人の考えていることをスキャンするの、結構疲れるんですよ。自分の利益になることだったら、多少の疲労を覚悟してでもやりますよ。でもね、いまさらこんな男の考えが分かったところで、どうにもなりませんからね。
「それでは……ご苦労様でした……」
「いや、だから少し待ってくれと……」
ほんの一瞬だけ、彼の考えていることをキャッチしました。そこには、他の女の姿がちらほらと浮かんでおりました。なるほど、今日の交尾要員は公爵令嬢のステイシーとキャサリンだと分かりました。彼女たちは既にそれぞれの部屋で待機しています。でも、あまりにも私とポワソン様の話が長いものだから、少しイライラして、この部屋の前までやって来たようでした。
そして……大変な話を聞いてしまったと。私とポワソン様の婚約話がなくなってしまう……これは彼女たちにとっては大きなチャンスでした。次の婚約者に選ばれれば……それは家にとって大変な名誉ですからね。つまり、もちろん今日の二人に限らず、彼を取り巻く令嬢たちに同じ権利があるわけです。最初に身籠るのは一体誰なのか……それでおおよその勝負は決着することでしょう。
「ポワソン様!!!」
私は思わず言ってしまいました。
「いま、あなた様が考えていることを当ててみましょうか???」
私はイジワルな女なのでしょうか???自分ではいまいち分かりません。でもね、仕方ないと思うんですよ。だって、みんなが私どもを敵に回したがるから。だとしたら、もはや誰も信じることなんてできないじゃないですか。
「私と婚約破棄して今晩はフリー……外に控えている二人の令嬢……さあ、どちらから最初に抱こうか……違いますか???」
こんなことを言いだすものですから、ポワソン様はますます驚いてしまいました。まあ、無理もありません。当然のことだと思います。
「どうして……そんなことが分かるんだ???」
「まあ、なんとなく漠然とですね」
「はあっ……そうなのか……」
(やばいやばい……このことが皇帝陛下にばれてしまったら、それこそ私はどんなふうになってしまうのだろうか???ああ、非常にまずいことになってしまうな……)
「いまさら慌てる必要はないと思いますよ???」
「どうして……」
「もうこんな議論はお終いにしましょう。さあ、とっととそこの二人と夜をともにすればいいじゃないですか。誰も文句は言いませんよ」
私がこう言うと、例の二人は部屋の中に入ってきて、一瞬私の方を見ました。そして、すぐさまポワソン様の元に駆けより、
「王子様!!!」
と猫のように甘く囁くのでした。
「ねえ、今晩は私たちの相手をして下さるのでしょう???」
「ああっ、あああああっ…………」
これが本意……でも、この世界は少しずつまずい方向に動き出そうとしておりました。当然、誰も気が付きませんでしたけれども。
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